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スノー 遠い鐘の音 星になる 明日への光 君が見た夢 です

スノー

「すごーい。これがパウダースノーなんだね」
何回目かのキミとのスキー旅行。
いつも同じ場所に行っていたけれど、付き合って2年目の記念日と旅行が重なったこともあり、少し特別感を出したくて、パウダースノーで有名な場所に来た。
滑る前にゲレンデの雪を触わり
「すごい、サラサラしてる」
「すごい、ふわふわしてる」
「すごい、柔らかい」
と、とにかく「すごい」を繰り返す。
そんなキミの様子を微笑ましく思いながら、ここに来れて良かったな。と、しみじみ思うのだった。


遠い鐘の音

海辺を散歩していると、聞こえてきた遠い鐘の音。
「何の音だろう?」
と耳を澄ますと
「あ、終わりか」
鳴った回数は3回で。
「3回…3回…?」
鐘が3回…と考えていると
「結婚式してるんだね」
「天気に恵まれたね」
すれ違う人たちの会話が聞こえる。
「そっか、結婚式か」
不意に聞こえてきた遠い鐘の音。
その音が結婚式の鐘の音と知り、幸せのお裾分けをもらったような気分になったのでした。


星になる

「なあ」
キミと会った瞬間俺にはわかった。
キミの様子がいつもと違うことに。
笑ってはいるけれど、ムリして笑っていることに。
「なんかあったろ?」
「え?」
俺の言葉に、言葉を詰まらせるキミ。それだけで、何かあったのは明白で。
「ムリに聞き出すことはしない。けど、話したくなったら、いくらでも聞くよ」
キミの頭をそっと撫でながら微笑むと
「ありがとう」
キミは俺に抱きつく。
俺は、キミを抱き返すと
「俺は、キミだけの星になる」
と心に誓ったのだった。


明日への光

「はぁ」
会社の屋上にある、ベンチに座っていると
「大丈夫ですか?」
缶コーヒーを差し出される。
「え?あ、ありがとう」
差し出した人を見ると、心配そうな顔をした、隣の席の子だった。
「大変でしたね」
彼女は俺の隣に座ると、労いの言葉をくれる。
「ありがとう。何とかなって良かったよ」
自分が担当している案件。その案件に急な仕様変更が出て、対応に追われたのだ。
「けど、さすがに疲れたから、コーヒーが体に沁みるよ」
何故だかこんな事態が続いており、心身ともに疲れていた。
「…1人で頑張らないでください」
「え?」
「自分の担当だから。と、1人で抱え込まないで、周りを頼ってください」
自分の担当案件は自分で。と思っている俺には、彼女の言葉が意外なように聞こえて。
「…いいのかな。誰かに頼っても」
「もちろんです。私で良ければお手伝いします」
微笑む彼女に、霧が晴れたように気持ちが軽くなる。
「ありがとう。これからは頼らせてもらうね」
「はい」
彼女がくれた明日への光。その光は、俺の疲れた心を上向きにしてくれたのでした。


君が見た夢

「おはよう。ねえ、どうしたの?」
リビングでコーヒーを入れていると、起きてきた君の様子がいつもと違うことが気になる。
眠そう。とか、体調が悪そう。ではなく、泣き出しそうな感じがしたから。
「…怖い夢を見たの」
こちらにゆっくりと歩きながら、君は弱々しく答える。
「そっか。もう大丈夫だよ」
君に近寄り、安心させるようにギュッと抱きしめると、安心したのか、君は僕に抱きつき泣き始める。
「あなたとケンカして、別れた夢だったの」
と、涙を流す君が愛しくて
「大丈夫だよ。君が見た夢は現実にはならないから」
君を抱きしめる腕に力を込めたのだった。

12/17/2025, 9:46:25 AM