空白 君と見上げる月…🌙 センチメンタル・ジャーニー 答えは、まだ 靴紐 もしも世界が終わるなら 秋色 です。
空白
「はぁ」
何もする事がないと、思い出してしまう、キミのこと。
忙しいときは思い出す暇がないから、今は忙しいことが有り難い。
「いつになれば、キミのことを忘れられるかな」
こんなにも好きなのに、離れていってしまったキミを、忘れられずに、未練がましく想ってる。
「早く、キミへの想いを断ち切って、キミで埋まった心を空白にしたい」
空白ができたとき、次の恋に進めそうな気がする。
「ムリに忘れようとするから、忘れられないのかもしれないな」
ゆっくりでいい。前を向こうと思うのだった。
君と見上げる月…🌙
「おいしかったね」
「うん。けど、大分暗くなったね」
君と外食をし、食べ終わって外に出ると、辺りは暗くなっていた。
「前より暗くなるのが早くなったね」
「そうだね。それにこの空だし、余計だよね」
空は一面雲に覆われていて、光は見えない。
「あーあ、残念だなぁ」
空を見上げ、君はため息を吐く。
「どうかしたの?」
「最近忙しくて、ゆっくり夜空を見ることがなかったの。晴れてたら、見れたのになぁ。と思って」
余程残念なのか、君はがっくりと肩を落とす。
「そっかあ。…そうだ。じゃあ次は、海にドライブに行こうか。海の方が、月も星もキレイだと思うし」
そう提案すると
「いいの?行きたい。絶対行こう」
落ち込んでいたのが嘘のように、君の目がぱあっと輝く。
「君と見上げる月…🌙1人で見るよりキレイだろうな」
「そうだね。あなたと一緒に見る方が、輝いて見えるだろうね」
君は俺を見つめ、微笑むのだった。
センチメンタル・ジャーニー
「はぁ~。画像で見るより、遥かにキレイ」
センチメンタル・ジャーニー。という名目で来た、日帰り旅行。男の俺がセンチメンタル・ジャーニー?とも思うけど、来たかったんだよね、ここに。できれば、彼女と一緒にさ。
「けど、フラレちまったもんは、しょうがねぇしな。あんまり本とかでも紹介しないような穴場であるここに、来られなかったことを後悔しやがれ」
写真をたくさん撮り、見せつけるようにSNSにアップする。
「さぁてと。美味いもんでも食って、あいつのことなんか忘れよ」
うーんと伸びをし、美味しいものを食べるため、その場を後にするのだった。
答えは、まだ
どんなにたくさん考えても、答えは、まだ出ない。
「どうするのが最善か。僕にはわからない」
情けないけれど、弱音を吐く僕に
「そんなに深く悩まないで。どんなに悩んでも、なるようにしかならないから」
キミは優しく微笑む。
「それに、あなたには私がいる。だから、1人で悩まないで私を頼ってよ」
その言葉に、僕はハッとする。
「私が聞いても解決にはならないかもしれない。そのときは、あなたと一緒に悩んで、悩んで、悩み抜いて、答えを出せたらいいと思う」
「うん、そうだね」
僕は1人じゃない。一緒に悩んでくれる人がいる。それだけで、重かった心が軽くなったのを感じる。
「じゃあ早速なんだけど…」
と話し出した僕に、キミは笑った。
僕に寄り添い、力になってくれるキミを、これからも大切にしようと思うのだった。
靴紐
ほどけてしまった靴紐を、結ぶためにしゃがみ込む。
「え?あれ?え?え?」
が、紐を結ぼうにも、ぽよんと出っ張ったお腹が邪魔して結びづらい。
「いつの間にこんなに…」
お腹が出たんだろう?
「はぁ…」
何とか靴紐を結んだ僕が、ダイエットを決意したのは言うまでもない。
もしも世界が終わるなら
「もしも世界が終わるなら、何がしたい?」
キミとディナーを楽しんでいると、不意にそう聞かれる。
「どうしたの?急に」
食事の手を止め、キミに視線を合わせると
「この前読んだ雑誌に、アンケートがあってね。あなたならどうするかなぁ。って」
ふふっと笑われる。
「うーん、そうだなぁ。ありきたりだろうけど、美味しいものを食べる。とか、旅行に行く。とか」
そう答えると
「やっぱり、そんな感じだよね」
キミは頷く。
「たださ」
「ん?」
「何をしてもいいんだけど」
「うん」
「キミと一緒。なのは必須だね」
キミに微笑むと
「ありがとう」
キミは頬を紅くするのだった。
秋色
「大分、涼しくなったね」
長引いた残暑が終わり、一気に、秋の気配になる。
「今はまだ半袖1枚で過ごせるけど、薄手の長袖も用意しなきゃな」
歩いているからか、半袖1枚でも、寒くはない。
「そう?私はちょっと寒いかな」
隣を歩くキミは、腕を擦っている。
「でも、少し寒く感じるから、秋だな。って思うけど、周りは全然、秋って感じじゃないよね」
確かに、歩く街の様子、木の葉も緑色だし、秋とは到底言えなそうだ。
「そうだね。でもきっと、景色が秋色になるのはあっという間。今しか感じられない今を、楽しもう」
キミにニコッと笑いかけ、僕はキミの手をつないだのだった。
ひとりきり 台風が過ぎ去って です。
ひとりきり
キミを家に送って、今は家にひとりきり。
さっきまでキミと話して笑って、楽しかった時間が嘘みたいに、シーンと静まり返っている。
「何か見るか」
静けさに耐えられず、テレビをつけてみるけれど、ひとりきりだと、何を見ても面白くない。
「キミと付き合う前は、これが普通だったのにな」
ひとりきりでいることの淋しさ。キミがいなければ、知ることはなかったかもしれない。
「でもきっと、ひとりきりの淋しさを知ることも、キミへの想いを強くするのに必要な時間なのかもしれない」
そう考え、ひとりきりの時間を過ごすのだった。
台風が過ぎ去って
台風が過ぎ去って、気持ちの良い青空が広がっている。
「台風一過。だね」
少し、風の強さは残っているものの、昨日の雨風が嘘のように、太陽がキラキラと輝いている。
「嘘だったら、良かったのになぁ」
風に吹かれて飛んできた、ゴミや葉が庭のあちこちに散らばっている。
「掃除、しなきゃ」
庭の現状にため息を吐きながら、ゴミ拾いを始めたのだった。
フィルター Red,Green,Blue です。
実際に試したわけじゃないので、間違っていたら、すみません。
フィルター
「お疲れさま」
仕事帰り、仲の良い同僚と飲みに来ていた。
「うま~い」
「1週間のストレスと疲れが吹き飛ぶな」
まずはお決まりのビールで喉を潤し、一息つく。
そのあと、いろんなお酒やおつまみを注文し、他愛もない話をだらだらとしていた。
「そういやおまえ、この前気になってる子がいる。って言ってたよな」
いい感じに酔ってきたころ、そんな話題を出される。
「ああ、言ったな」
「その子とはどうなってるんだよ」
ニヤニヤしながら聞かれたが
「…どうもしてないが」
残念ながら何もなく、そう答えると
「は?どうもしてない?」
俺の答えに怪訝な顔をする。そして
「なんだよ、気になるならもっと積極的にいけよ」
呆れた顔をしながらそう言うが
「俺だって、できるなら仲良くなれるようにしたいさ。でもその子、仕事以外で話しかけようとすると、上手く逃げるっていうか、避けられるっていうか…とにかく、話ができないんだ」
俺だって、言われなくてもそうしたい。
「なあ、もしかしてその子って、おまえと同じ部署の子?」
「ん、そうだけど。何で?」
少し、考える素振りを見せたあと
「前に、同じ部署の子が話してたことがあるんだ。違う部署に、彼氏に裏切られて、男性不信とまでは言わないが、男性が苦手な友だちがいるって。これって、もしかしたらその子のことじゃないか」
と話してくれる。
「え…」
「名前は知らないから確定ってわけじゃないけど」
違ってたら悪いな。と言われたけど
「いや、教えてくれてありがとう。俺、そういう人もいる。ってこと、理解してなかったわ」
ため息を吐くと
「じゃあ、その子のこと、諦めるのか?」
と聞かれ
「いや、教えてもらったことを考慮しながら、心のフィルターを外してもらえるように頑張るよ」
俺は微笑むのだった。
Red,Green,Blue
「ねえ、Red,Green,Blueを混ぜると、何色になるか知ってる?」
絵の具3つと筆を手に持ち、キミに聞かれる。
「え?何色だろ」
わからなかった俺が、素直に答えると
「聞くより見た方が早いし、納得できるよね」
ニコッと笑われ、絵の具と筆を渡される。
「確かにそうですね」
その通りだな。と、早速絵の具を…出せる場所がなかったので、自分の手のひらに少しずつ出し混ぜてみると…。
「…黒っぽい」
黒っぽい色になった。
「ああ。出した量によって少し変わるけど、だいたいそんな感じだね」
キミは俺の手を取ると、そっと手を拭く。
「ありがとうございます」
「私たちもさ」
「え?」
「私たちも一緒だと思うんだ。付き合う相手によって、何かしら影響を受ける。だから、相手は選ぶようにして」
俺が、付き合い始めた彼女。ちょっと。と思うところはあっても付き合っているけど、何か、心配なことがあるのかもしれない。
「はい。わかりました」
俺の返事にキミはホッとしたような顔をする。一緒にいるならキミのような人がいいんだろうな。と、俺は思ったのだった。
クラスでいつも、1人で過ごしている人がいる。
他のみんなが話していても気にすることなく、本を読んだり、お昼ごはんも1人で食べている。
「あいつって、静かだよなぁ」
「そうだなぁ」
とは言っても、嫌われているわけではない。
「でも、1人でいて、つまらなくないのかな」
僕は昔、友だちができなくて、焦っていたときがある。友だちができない、どうしよう。あの輪に入りたいけど、仲間になれなくて、泣いたこともあった。
今は気の合う友だちがいるから、毎日が楽しい。
でも、彼を見ていると、友だちがいなくてもつまらなそうではないし、むしろ、孤高の存在のようでカッコよく見える。
仲間になれなくて不安だった自分。今なら、みんなには友だちがいるのに自分にはいない。と焦る必要はないし、仲間になれなくても、自分らしく楽しめばいいんだ。と思えるようになったのでした。
「あ、強くなってきた」
就業後、会社を出るとき、邪魔になる程度の雨が降っていた。
「強くなるかもしれないし、念の為、置き傘を取ってくるか」
面倒くさかったけれど、傘を取りに戻って正解だった。
「良かった、取りに行って」
傘を広げると、さらに雨は強くなる。
「…通り雨かな」
でき始めた水溜りを避けながら駅へ歩いていると、コンビニの明かりに照らされた、雨と君が見える。
「あ…」
「傘、持ってないの?」
近くまで行くと、君が僕に気付いたのでそう言うと
「はい。小雨だったので油断しました。傘を買おうと思ったら品切れしてて…また小雨になるまで雨宿りさせてもらってます」
あはは。と笑う。
「良かったら、狭いけど入る?」
と誘ってみると
「いえ、申し訳ないですから…」
思った通り断られる。
「でも、いつ弱くなるかわからないし。ね。」
もう一度誘ってみると
「…ありがとうございます」
君はおずおずと傘に入ってくる。
「じゃ、行こうか」
「はい」
気になっている君と並んで歩く。改めて、傘を取りに戻って良かった。と思ったのだった。