明日はキミとの初デート。眠れないほど楽しみで仕方ない。行き先は遊園地。どんな服で来るのかな。待ち合わせで、キミを待たせないように早く家を出ないと…などなど、考えることがいっぱいで、ドキドキワクワクが止まらない。
「でも、ちゃんと寝ないと」
寝不足で、カッコ悪いとこは見せられない。そう思って目を閉じたけど、なかなか眠気はやって来ない。
「ん?カッコ悪いとこ?」
自分で思ったことなのに、そのワードが引っかかる。
「…カッコ悪いとこ見せて、初デートなのに、別れましょ。なんて言われたらどうしよう」
別のドキドキに襲われる。
「どうしよう、どうしよう」
まだ行ってもいないのに、ネガティブな感情に心を乱され、余計に眠れなくなったのでした。
「キミのことが好きです。僕と付き合ってください」
思い切ってした告白を
「ありがとう。嬉しい」
キミは笑顔で受け入れてくれる。
「夢みたいだ。ずっと好きだったキミと付き合えるなんて」
ニコニコと笑うキミの隣で感動に浸っていると、遠くの方から何やら音が聞こえる。
「ん?何の音だろう?」
徐々に大きくなる音。キミと一緒にいるのに、音が邪魔をしてくる。
「あー、もう、うるさい」
と、怒りを爆発させたところで
「…やっぱり夢か」
目が覚めた。
「たまに恐いのもあるけど、夢はいいよな」
教室の机に座り、友達と話しているキミをそっと見つめる。
「夢では告白をOKしてもらえたけど、現実は、用があるときにしか話したことがない、ただのクラスメイトだもんな」
はぁ。とため息を吐き、机に突っ伏す。
「夢と現実。その差は大きいなぁ」
もう一度キミをちらりと見て、また、ため息を吐くのだった。
「一緒に写真撮ろう」
コートを羽織らないと寒い中、高校の卒業式が終わり、友達と写真を撮っていた。
「あっという間だったね」
「そうだね。早かったね、3年間」
そんな話をしながら、校舎や風景を撮っていたら
「名残惜しいのはわかるけど、そろそろ帰りなさい」
担任の先生がやって来る。
「あ、先生。一緒に写真撮ってください」
とお願いすると
「いいよ」
快く承諾してくれる。
「ありがとうございます」
先生と写真を撮り
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
荷物を持ち、先生に
「先生、さよな…」
「ちょっと待って」
挨拶しようとしたら、止められる。
「どうかしましたか?」
「うん。君たちは卒業生だから、明日からはここに来ないでしょ」
「はい」
「いつもなら、さよなら。でいいんだけど、卒業生にさよなら。って言われると何だか淋しくてね」
「先生…」
「だから、さよならは言わないで、こう言って欲しいんだ。2人とも、またね」
「はい。先生、また会いましょう」
笑顔で先生に手を振り、学校を後にした。
温かい陽射しが降り注ぐ窓際で
僕は1人、戦っていた。
「ぽかぽかな陽射しに負けちゃダメだ。負けたら怒られるのは目に見えている。でも、でも…」
お昼ご飯を食べ、お腹が満たされている中、仕事に取り掛からなければならないのに。
降り注ぐ光と、目を閉じれば闇。という、光と闇の狭間で、僕は睡魔と戦うのだった。
泣かないで と 距離 です。
泣かないで
「すみませんでした」
涙を流しながら、キミは頭を下げる。
「何とかなったし、大丈夫だよ」
安心させようとキミに笑顔を向けるけど、キミの涙は止まらない。
「俺も、キミくらい、仕事に慣れてきた頃にミスをしたことがあってね。上司に助けてもらったんだ」
「…そうなんですか?」
「ああ。謝る俺にその上司は、誰にでもミスはある。次からはミスしないようにしてくれればそれでいい。俺はキミの上司だからね。ミスをした部下の面倒をみるのも俺の仕事。キミが頑張ってくれてるのはわかってるから、気持ちを切り替えて、また一緒に頑張ろう。って言ってくれてね」
「………」
「二番煎じで悪いけど…キミが頑張ってるのはわかってる。何かあったときにはフォローするから、ミスを恐がらず、仕事を一緒に頑張ろう。ね、もう泣かないで」
キミの目を見つめると
「はい。ありがとうございます」
目に涙を溜めたまま、キミは微笑むのだった。
距離
休み時間。
廊下で友達と楽しそうに話すキミを見かけた。
「あ…」
俺に気づいたキミは俺に手を振ってくれる。
俺はそれに片手を軽く上げ、応える。
これが俺とキミとのいつものやり取り。
仲の良い幼なじみ。として有名な俺たち。
2人で並んで歩いていても、周りからは、仲が良いね。
と言われるだけ。
正直言って、キミに片思い中の俺には、その言葉は痛い。
隣にいるのに、キミとの距離が遠く感じる。
幼なじみとして、隣にいられなくなる。
その恐怖は感じるけれど、このまま、ただの幼なじみでいるつもりはない。
誰かに取られてしまう前に、想いをキミに伝えようと思うのだった。