はなればなれ と冬になったら です。
はなればなれ
会社から、出向するように。との辞令が出て、単身赴任することになった。
共働きで、家事も分担してたから、一人暮らしに不安はなかった。
なのに、自分で作る料理は何か一味足りないし、洗濯物もふわふわしてない。
キミとはなればなれになって、どれほどキミが僕を支えてくれているかを思い知った。
「早く、キミに会って感謝を伝えたい」
次の休みには、家に帰ろうと思うのだった。
冬になったら
「冬になったら、どこに行こうか」
キミと2人で旅行雑誌を見ながら、旅行の計画を立てる。
「そうだなあ。秋は紅葉のキレイな所にしたから、冬は雪景色を見に行こうか」
「いいね。それじゃ…」
雑誌をパラパラとめくりながら、候補を挙げる。
「すごい雪だね」
「うん、この辺では見られないね」
高く積み上がった雪の写真を見ながら
「紅葉もそうだけどさ、四季があるからこその景色が見れる。っていいよね」
「そうだね。これからも、その季節にしか見れないもの、できないことを堪能していこう」
「うん」
これから来る季節。キミと一緒に過ごせることを楽しみに思うのだった。
動画を見ていたときにオススメに出てきた子猫の動画。
試しに見てみると、小さくて、もふもふで、にゃ〜とかわいい声で鳴いている。
「かわいいなぁ」
癒されるなぁ。と見ていてふと思う。
「あれ、子猫って…」
そうか。キミみたいなんだ。
小さくて、ふわふわで、俺を見上げてかわいい笑顔を見せてくれる。
「電話しよ」
キミの声が聞きたくなり、電話をかけるのだった。
秋風に吹かれ、紅葉した木々の葉が舞う中
キミと並んで家路を歩く。
「朝晩、寒くなったよね」
「そうだね」
「寒いのイヤだなぁ」
上着をギュッと握りしめ、キミは身を縮こませる。
「俺も寒いのはキライだなぁ。でもさ、寒いのを言い訳に、手を繋げるのは嬉しいかな」
俺はキミの手を取り、ギュッと握るのだった。
「また会いましょう」
手を振って別れたあの日から、何年もの月日が流れた。
みんなそれぞれに日々の生活が忙しく、何の連絡も取らないし、来ない。
それでも、偶然どこかで会えば、話が弾む。
友達っていいな。って思う。
1つ前の飛べない翼と、今回のスリルです。
よろしくお願いします。
飛べない翼
「ただいま」
玄関を開けると、電気は点いているのに、人の気配が感じられないほど物音がしなかった。
「あれ?」
いつもならテレビが点いているのに。と、不思議に思いながら部屋に上がると、膝を抱え俯いているキミがいた。
「どうしたの?何かあった?」
心配になり近寄ると
「…仕事でミスしちゃって。上司に怒られたの」
ゆっくり顔を上げ、理由を話してくれたキミの目は、赤く腫れていた。
「そう、上司に…」
慰めるように髪を撫でると
「でも、怒られても仕方ないの。私が悪かったわけだし」
また、俯いてしまう。
「そっか」
自信を無くし、傷ついているキミの翼。飛べない翼が、また大空で羽ばたけるように、僕はキミを優しく抱きしめたのだった。
スリル
「うわー」
思わず出た大声に
「なに、どうしたの?」
隣で寝ていたキミが目を覚ます。
「ヤバい。出る時間過ぎてる」
目覚まし時計を見せながらそう言うと
「え…」
目を見開き、キミは固まる。
「と、とにかく急ごう」
僕がベッドを下りると
「う、うん」
我に返り、キミも後に続いた。
「ごめんね、起きられなくて」
駅に2人で向かっている途中、キミに謝られる。
「何言ってんの。僕も起きられなかったし、お互い様でしょ」
キミに笑顔を向けると、笑顔で頷かれた。
「それにしても、お互いに朝は弱い。って言ったけど、2人して目覚ましで起きられないなんてね」
笑いながら肩を竦めるキミに
「キミと一緒なら、楽しい毎日が過ごせそう。って言ったけど、こんなスリルはいらないね」
明日から、目覚ましを増やすことを告げたのだった。