1つ前の飛べない翼と、今回のスリルです。
よろしくお願いします。
飛べない翼
「ただいま」
玄関を開けると、電気は点いているのに、人の気配が感じられないほど物音がしなかった。
「あれ?」
いつもならテレビが点いているのに。と、不思議に思いながら部屋に上がると、膝を抱え俯いているキミがいた。
「どうしたの?何かあった?」
心配になり近寄ると
「…仕事でミスしちゃって。上司に怒られたの」
ゆっくり顔を上げ、理由を話してくれたキミの目は、赤く腫れていた。
「そう、上司に…」
慰めるように髪を撫でると
「でも、怒られても仕方ないの。私が悪かったわけだし」
また、俯いてしまう。
「そっか」
自信を無くし、傷ついているキミの翼。飛べない翼が、また大空で羽ばたけるように、僕はキミを優しく抱きしめたのだった。
スリル
「うわー」
思わず出た大声に
「なに、どうしたの?」
隣で寝ていたキミが目を覚ます。
「ヤバい。出る時間過ぎてる」
目覚まし時計を見せながらそう言うと
「え…」
目を見開き、キミは固まる。
「と、とにかく急ごう」
僕がベッドを下りると
「う、うん」
我に返り、キミも後に続いた。
「ごめんね、起きられなくて」
駅に2人で向かっている途中、キミに謝られる。
「何言ってんの。僕も起きられなかったし、お互い様でしょ」
キミに笑顔を向けると、笑顔で頷かれた。
「それにしても、お互いに朝は弱い。って言ったけど、2人して目覚ましで起きられないなんてね」
笑いながら肩を竦めるキミに
「キミと一緒なら、楽しい毎日が過ごせそう。って言ったけど、こんなスリルはいらないね」
明日から、目覚ましを増やすことを告げたのだった。
11/13/2024, 8:43:24 AM