1日の始まりはいつも、
「朝だよ、起きて」
キミが僕を起こす優しい声と、コーヒーの香りで始まる。
その日によってコーヒーは、ブラック、カフェオレに変わるけど、キミが起こす優しい声と、仕事に行くとき
「いってらっしゃい。今日もお仕事頑張ってね」
玄関で見送ってくれる笑顔は変わらない。
キミから頑張って。と言われると
「よし。今日も頑張るぞ」
と、気合いが入るから不思議だ。
これからも、1日の始まり方は、変わることなく、このまま続いてほしいと思う。
恋人から夫婦へ、関係が変わる。
同棲してたから、恋人から夫婦。って言い方が変わるだけで、同棲してたときの続き。だと思ってた。
けど、恋人から夫婦に変わって、小さなすれ違いが生まれるようになった。
恋人のときには、好きでいてもらえるように。って頑張ってたけれど、夫婦になったんだし、頑張らなくても大丈夫。なんて、キミに甘えすぎて、ケンカになって…。
でも、ケンカしたことは悪いことじゃなかった。
お互いの気持ちをぶつけ合えたから。
きっとこれから二人で過ごす中で、またすれ違いが起こることもあるよね。
そんなときには、とことん話し合って、お互いの気持ちをさらけ出そう。
僕はキミが大好きで、ずっと一緒にいたいから。
秋晴れが広がる空の下、キミと公園を散歩する。
「デート、公園で良かったの?」
手を繋ぎ、のんびり歩きながら聞いてみると
「うん。…というか…」
キミはピタリと足を止め
「ごめんね。ホントは、遊園地とか、ショッピングモールのお店をいっぱい見て回るとか、苦手なの」
申し訳なさそうに俯く。
「嫌われたくなくて、今まで言えなかったんだけど…」
手を離さないで。とでも言うように、繋いだ手に力が込もる。
「…そっか」
僕の声に、キミは肩をビクリと震わせ
「ホントにごめ…」
「そうじゃなくて」
顔を上げたキミの声を遮り
「ホントは僕も、あまり好きじゃないんだ」
本音を話す。
「デートの場所。女の子は遊園地好きなんだろうな。って選んでた。けど、乗り物に乗れないわけじゃないんだけど、得意ではなくて…。僕は、動物園とか水族館、プラネタリウムとかが、好きなんだ」
僕の話に
「…嫌われるのが怖くて言えなかったけど、ちゃんと話せば良かったね」
キミは微笑む。
「ホントにね」
お互いに言えなかった本音。伝え合えたことで、僕たちの心は秋晴れの空のように、キレイに晴れたのでした。
たくさんの星たちが彩る夜空を
「すごい、キレイ」
見上げながら、キミは、はしゃいでいる。
「こんなにキレイな星空、初めて見たよ。連れてきてくれてありがとう」
星たちに負けないくらいの、キミの輝く笑顔に
「キミと結婚したいな」
不意に、言葉がこぼれた。
「え?」
驚いたのは、僕もキミも一緒で。
「不意に出てしまったけれど、キミと結婚したいと思ってる。けど、指輪もないし、こんなプロポーズじゃ…」
僕の言葉に俯くキミに、慌てて言葉を紡ぐと
「…ありがとう。うれしいです」
顔を上げたキミは、ポロポロと涙を流し、微笑んでいた。
忘れたくても忘れられない、忘れちゃいけないキミの美しい姿。
その姿を、僕がずっと守りたい。
結婚した今でも、僕はそう思っている。
やわらかな光に包まれた部屋で
キミはすやすやと眠っている。
パワフルに活動しているのが嘘のように
穏やかな表情で。
「…撫でたら、起きちゃうかな」
困るくらいに僕を振り回すくせに、
寝顔はかわいいなんて…。
ずるいなぁ。って思いながら、キミに手を伸ばすけど、
起こしてしまったら、またやんちゃするのは明白で。
「僕も少し寝るか」
散らかった部屋を片付けて疲れたし、休憩するか。
と、気持ち良さそうに寝ている愛犬の隣で、僕は横になったのだった。