たつみ暁

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3/10/2025, 10:36:44 AM

もっと綺麗になりたい
もっと痩せたい
もっとお金が欲しい
もっと昇進してお給料増やして
もっとまともな彼氏が欲しい
もっと優しい妻が欲しい
もっと優秀な子供が欲しい
もっとあたたかい家族が欲しい
もっと強大な権力が欲しい
もっと人気が欲しい
もっと領土が欲しい

もっと もっと もっと

「人間の欲は果てしないものだ」

神様は豪奢な椅子に深々と座って、疲れきったため息をつく。

『ただ1つ願いが叶うなら、何を願うか』

天使を遣わせて訊いてみたら、人間たちは自分のことばかり。
アダムとイブが楽園から追われた時から、何にも進歩していない。
天使が持ってきた、願いを書き連ねた紙を気怠くめくった神様の目に、1つの願いが留まった。

「これなら叶えてもいいだろう」



「わあ」

病気で外に出られない女の子は、ベッドの上から窓の外を見て、歓声をあげる。
昼なのに夜のように暗くなって、この地方では絶対に見られないオーロラが、美しいカーテンをなびかせていた。

『一度でいいからオーロラを見たい』

それが、その子の願いだった。

2025/03/10 お題「願いが1つ叶うならば」

3/9/2025, 10:10:59 AM

嗚呼、七年二ヶ月続いたソシャゲがさっき終わった。
自分はちょっと触って、難しくてすぐにやめてしまったけど。
ちゃんと完結したというのだから、感服と、寂しさと。

オフライン版をダウンロードしとけと皆が言っていた。
自分はめんどくさがって、スマホのメモリを惜しんで、結局しなかった。
嗚呼、己のものぐさを疎ましく思う。

そんなところに、オフライン版だけなら明日以降もダウンロードできるかも、という話が。
嗚呼、もう一度物語を追えるだろうか。
終えることが、できるだろうか。

2025/03/09 お題「嗚呼」

3/8/2025, 10:19:23 AM

子供の頃、仲良しの子がいた。
その頃は空き地に入り込むなんて容易くできたから、工事が中断して放置された土地の、鉄材が置かれた裏に、秘密基地を作った。
二人だけの秘密の場所。
ちょっと背徳的だけど、二人きりの秘密を共有するのが楽しくて、アルミの雨よけをかざした下で、日が暮れるまで話をした。

だけど、ある日。

いつも通り秘密基地に入ろうとすると、笑い声が聞こえてきた。
あの子だけじゃない。クラスで人気一人占めのお調子者。

「あんな根暗とずっと一緒でしんどかったでしょ? これからはわたしといれば安心だから!」

あの子が何と答えたかまでは聞かなかった。
あいつが、二人きりの友情にずけずけ踏み込んできたのが、あの子を横取りしたのが、悔しくて、悲しくて、怒りが治まらなくて。
うちに帰って大声をあげて泣いた。

不登校になって、結局父の転勤で転校するまで、あの子には会わなかったし、そのまま音信不通になった。

ねえ、秘密の場所を暴かれたおまえは今、どんな気持ち?
大人になっても表面だけ良くて。
ひとのものを欲しがって。
ひとの旦那をたぶらかして。
この不倫現場を押さえるのに、けっこう苦労したし、お金もかけたんだよ?

ああ、わたしはどんな顔をしてるかな。
数十年越しに卑怯者を社会的に抹殺できるチャンスが、しっかりと手の中に握り締められている、今この時に。

2025/03/08 秘密の場所

3/7/2025, 10:29:22 AM

ライバルに出し抜かれて
ライフはもうゼロよ!
ラッキーが降ってこないかしら!?

あたしは主役目指して歌い続けるしかないの ラララ

2025/03/07 お題「ラララ」

3/6/2025, 10:53:37 AM

風が強くなると冬が来る。この国は、雪に閉ざされる期間が長い。今年も風が冬を運んでくる。
種を埋めても、よほど強い作物でもなかなか根付かないこの不毛の大地で、民を生かすには、祖父が残した騎士団を強くして他国を攻め、奪い取るしか無かった。
俺は苛烈な王に見えるだろう。史書には暴君とすら書かれても文句は言えまい。
こんな横暴な主君に連れ添ってくれる女もいないだろう。王座は血縁に譲ればいい。

そう考えていた俺の前に、希望は空から降ってきた。

「きゃああああ!!」

騎獣を飛ばして、悲鳴と共に風が運んできた女を助けた。
この世界では見たことの無い服をまとい、人間には無いような黒髪黒瞳が印象的だった。

他所の世界から来たのだろう、ということはすぐに理解した。
この世界では、ありえないと思われることが起きうる。この西の大陸では知り得ないことが、他の大陸では存在するというから。

彼女は俺を恐れなかった。
笑いながら食事を共にし、この国の窮状を知るや否や、「わたしにできることがあるかもしれません」と自信を持って言った。

彼女が持っている植物と土の関係の知識は、舌を巻くものだった。
失敗することも多いが、強い麦が芽を出した時には、その場にいる研究者誰もが喜んで抱き合った。
風は、彼女という希望を運んできてくれた。
皆に囲まれてはにかむ彼女を見つめるその時には、俺の脳裏では、彼女に似合う指輪のデザインが浮かんでいた。

それを渡したら、彼女はどんな反応をするだろう。
どんな返事を、風は運んでくるのだろうか。

2025/03/06 お題「風が運ぶもの」

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