たつみ暁

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子供の頃、仲良しの子がいた。
その頃は空き地に入り込むなんて容易くできたから、工事が中断して放置された土地の、鉄材が置かれた裏に、秘密基地を作った。
二人だけの秘密の場所。
ちょっと背徳的だけど、二人きりの秘密を共有するのが楽しくて、アルミの雨よけをかざした下で、日が暮れるまで話をした。

だけど、ある日。

いつも通り秘密基地に入ろうとすると、笑い声が聞こえてきた。
あの子だけじゃない。クラスで人気一人占めのお調子者。

「あんな根暗とずっと一緒でしんどかったでしょ? これからはわたしといれば安心だから!」

あの子が何と答えたかまでは聞かなかった。
あいつが、二人きりの友情にずけずけ踏み込んできたのが、あの子を横取りしたのが、悔しくて、悲しくて、怒りが治まらなくて。
うちに帰って大声をあげて泣いた。

不登校になって、結局父の転勤で転校するまで、あの子には会わなかったし、そのまま音信不通になった。

ねえ、秘密の場所を暴かれたおまえは今、どんな気持ち?
大人になっても表面だけ良くて。
ひとのものを欲しがって。
ひとの旦那をたぶらかして。
この不倫現場を押さえるのに、けっこう苦労したし、お金もかけたんだよ?

ああ、わたしはどんな顔をしてるかな。
数十年越しに卑怯者を社会的に抹殺できるチャンスが、しっかりと手の中に握り締められている、今この時に。

2025/03/08 秘密の場所

3/8/2025, 10:19:23 AM