さっきまで
春なのにまだ寒いって縮こまってたのに
降ってくる花びらに手を伸ばして
逃げられた途端
軽い上着をぬぎ捨てて
桜の花びらが地面に落ちる前に
手の中に捕まえる遊びが始まった
どっちが早く捕まえられるか競争
なんてとっくに勝負はついている
もう捕まっているけど捕まえる気はないから
ひたいに汗をかいて
やっと捕まえたって合わせた手の中を
そっと見せてくれた君の得意気な顔を
ずっとおぼえていられれば
「桜散る」
やな事があっても早起きで、外に出て
日が昇ると朝露が降りてくる
私の瞳も潤って
瞼の縁が透き通って盛り上がる
地上に落ちるその前に
一粒残らず飲み下す
今日も今日とて
はじまる一日をやり過ごす
そのために
「泣かないよ」
ミズカキヤモリという大きな瞳の砂漠のトカゲ
遠目で太陽みたいなオレンジ色に目を引かれ、近くに見ると丸まったトラ猫の描かれたチョコレートの箱で、それを君へのお土産にする事にした。
「外国ではオレンジ色の猫って表現はわりとよくあるらしいけど、日本ではみかん色の猫とはあんまり言わないよね」
たらりと下がったしっぽが、輪切りのオレンジから垂れる果汁みたいな、そんなデザインのパッケージがかわいいと棚に飾ってくれた。
「チョコレートにはオレンジよりベリー系が合うと私は思う」
ミルクパンで沸かせた牛乳に、君は躊躇なくショコラオランジェをいくつか放り込んでかき混ぜる。
あれよという間に、ホットチョコレートの入ったマグカップは僕の手の平を温めた。
「贈り物の中身」
「手のひらの贈り物」
書いてる途中寝落ちして19時を過ぎ
放置してたモノと
今日のテーマが似てたので混ぜました。
その願いは叶えてあげられないんだ
泣きそうな顔をする君を見て僕の心は決まった
君が来てくれませんか?
新幹線の発車のベル
土壇場の決意で君の手を引いてかどわかす
いや嘘だな
君の部屋もあるんだ
用意周到なわがままが今弾けた
何も話さずに
もう離さずに
君の知らない街まで連れて来た
空っぽの君の部屋で
さらわれたさらわれたって君が同じ事しか言わなくなったから
つい出来心で
パリーン?
って呟いたら1分位間をおいて
バカじゃないのバカじゃないのバカでしょ!
こんな時にわかりにくい冗談普通は言わないでしょ!
ってめちゃくちゃ怒られた
願いを叶えたければ、自分で出来るだけの事をやっておいた方が、神様も手伝ってくれやすいんだよ
さあ君は僕の願いに応えてくれるかな
「行かないでと、願ったのに」
かみさまキツネとサラリーマン、好き
こんなに寒いのに砂漠みたいになるのが不思議ですね、って君が言ったのを思い出しながら。
アイスバーンをタイヤに削られてさらさらの氷の粒が積もるのに足を取られつつ、真夜中、君の住むマンションを出てすぐの道を歩く。
国道に出てコンビニを2つ素通りして、久しぶりに一人暮らしの自分の部屋に帰った。
目的の物を持ち出すのにどうしようかと少し考えて、結局寒さの前に見栄など役立たずとあきらめた。
大きなビニール袋を引きずって5分もたたずに部屋を出た。
運良くすぐに捕まったタクシーに乗り込むと、陽気な運転手さんが笑って言った。
「布団かい。大きいから人でも運んでるのかと思ったわ」
「おっきいけどめっちゃ軽いです」
がさがさと音を立てて、片手で大きな荷物を上げ下げして見せる。布団しか入ってません。
「ワンメーターで申し訳ないんですけど◯の◯までお願いします」
「はーい。彼女の所?」
「あー……そうゆう風に言えるようになるといいんですけど……」
力なく笑ってごまかした。
「−9℃の1時過ぎに、自分のために外に出て動いてくれるって愛だなって思いますよ」
「そうかなぁ……」
だったらとてもうれしいのに。
どこから曲がるのと聞いた運転手さんに、道悪いから埋まるかもしれないと国道で下ろしてもらう。
最後までニコニコと笑ってくれたな。
氷の砂の道を戻りながら、子供の頃の優しい記憶に励まされた。
布団の中で寒さに小さく丸まって眠っていると、決まって父が布団を一枚上に足してくれて、襟元をぽんぽんと叩かれると安心した。
もう大丈夫。
それを自分がする側になったんだな。
うまく大人になれているだろうか。
眠る君と黒猫の上に布団をもう一枚かけて、起こさないようにそっと襟元の布団を撫でて馴染ませた。
さあ自分も眠ろうとしてから、煙草を吸いたい欲がきて、リビングの窓を細く開ける。
煙草の煙に目を細めて、嫌そうな顔をされたのを見て初めて猫が表情豊かなのを知った。
禁煙はだいぶ進んでる。1日2本まで減らした。
窓からの冷気はフローリングの素足を容赦なくキリキリと痛めた。
こんなに寒いのに砂漠のトカゲみたいに片足を上げて、反対の足首にくっつける。
左右交互に繰り返し、最後には両手両脚を上げて熱い砂に腹をつけてやり過ごすトカゲの姿をかわいく思う。
半透明の大きなゴミ袋に入れた布団を振り回す自分は少しみっともないけれど。
暑くとも寒くとも、君と一緒にいるために必死で。
「凍える朝」