その願いは叶えてあげられないんだ
泣きそうな顔をする君を見て僕の心は決まった
君が来てくれませんか?
新幹線の発車のベル
土壇場の決意で君の手を引いてかどわかす
いや嘘だな
君の部屋もあるんだ
用意周到なわがままが今弾けた
何も話さずに
もう離さずに
君の知らない街まで連れて来た
空っぽの君の部屋で
さらわれたさらわれたって君が同じ事しか言わなくなったから
つい出来心で
パリーン?
って呟いたら1分位間をおいて
バカじゃないのバカじゃないのバカでしょ!
こんな時にわかりにくい冗談普通は言わないでしょ!
ってめちゃくちゃ怒られた
願いを叶えたければ、自分で出来るだけの事をやっておいた方が、神様も手伝ってくれやすいんだよ
さあ君は僕の願いに応えてくれるかな
「行かないでと、願ったのに」
かみさまキツネとサラリーマン、好き
こんなに寒いのに砂漠みたいになるのが不思議ですね、って君が言ったのを思い出しながら。
アイスバーンをタイヤに削られてさらさらの氷の粒が積もるのに足を取られつつ、真夜中、君の住むマンションを出てすぐの道を歩く。
国道に出てコンビニを2つ素通りして、久しぶりに一人暮らしの自分の部屋に帰った。
目的の物を持ち出すのにどうしようかと少し考えて、結局寒さの前に見栄など役立たずとあきらめた。
大きなビニール袋を引きずって5分もたたずに部屋を出た。
運良くすぐに捕まったタクシーに乗り込むと、陽気な運転手さんが笑って言った。
「布団かい。大きいから人でも運んでるのかと思ったわ」
「おっきいけどめっちゃ軽いです」
がさがさと音を立てて、片手で大きな荷物を上げ下げして見せる。布団しか入ってません。
「ワンメーターで申し訳ないんですけど◯の◯までお願いします」
「はーい。彼女の所?」
「あー……そうゆう風に言えるようになるといいんですけど……」
力なく笑ってごまかした。
「−9℃の1時過ぎに、自分のために外に出て動いてくれるって愛だなって思いますよ」
「そうかなぁ……」
だったらとてもうれしいのに。
どこから曲がるのと聞いた運転手さんに、道悪いから埋まるかもしれないと国道で下ろしてもらう。
最後までニコニコと笑ってくれたな。
氷の砂の道を戻りながら、子供の頃の優しい記憶に励まされた。
布団の中で寒さに小さく丸まって眠っていると、決まって父が布団を一枚上に足してくれて、襟元をぽんぽんと叩かれると安心した。
もう大丈夫。
それを自分がする側になったんだな。
うまく大人になれているだろうか。
眠る君と黒猫の上に布団をもう一枚かけて、起こさないようにそっと襟元の布団を撫でて馴染ませた。
さあ自分も眠ろうとしてから、煙草を吸いたい欲がきて、リビングの窓を細く開ける。
煙草の煙に目を細めて、嫌そうな顔をされたのを見て初めて猫が表情豊かなのを知った。
禁煙はだいぶ進んでる。1日2本まで減らした。
窓からの冷気はフローリングの素足を容赦なくキリキリと痛めた。
こんなに寒いのに砂漠のトカゲみたいに片足を上げて、反対の足首にくっつける。
左右交互に繰り返し、最後には両手両脚を上げて熱い砂に腹をつけてやり過ごすトカゲの姿をかわいく思う。
半透明の大きなゴミ袋に入れた布団を振り回す自分は少しみっともないけれど。
暑くとも寒くとも、君と一緒にいるために必死で。
「凍える朝」
Kindle Unlimited3ヶ月無料体験中。
今年はなかなか当たりが良いです。
去年は何百と読んだ中で、あとで買おうとリストに入れた物は10冊位、大抵は一度読んだはずなのに記憶に残ってないので驚いた。
タイトルや表紙で面白そうと思ってクリックすると、何年何月何日に利用したよと表示されて
「マジか。覚えてない」と何度も引っかかる。
あらすじ読んでも思い出せないんだよ。
プロでもコレだもの、人の記憶に残るのは本当に難しいものなんだな。
そしてそうやって出会った作家さんの別作品も合えばがっつりハマって作家買いになるけど、二作目で地雷踏んで苦手意識で次に踏み出せない作家さんもできた。人気作家さんなんだよ。
初めて読んだ話みたいなかわいい系の話なら大好きなんだけど!……地雷がおっかない。
良くも悪くも誰かの中に強く残るものを作るのは凄い事なんだなと改めて感じます。
そしてKindleの仕様で、ブラウザで読んでいるとちょっとした弾みで横読みが勝手に縦読みに切り替わるとき、とてもイラっときます。
ページをめくるため親指でスライドする時、どうしても付け根を支点に弧を描く動きになるので、横移動より縦移動の距離が長くなると、縦読みに判定されてしまう?
一度縦読みになると、真横にスライドしても横読みに戻らなくなるので、一旦ブラウザ閉じないといけなくなるのでとても面倒なのです。
「ページをめくる」
深呼吸して潜り込む水面下
基本は一人用
二人ではいきどまり
窒息気味の水中迷路
一つのシュノーケル
駅でさよなら
どこへでも行ける場所で
あなたの背中を見送るだけの行き止まり
引き返しやっと落ち着く息止まり
「傘の中の秘密」
君に負け続けられる日々はしあわせだったな
誰もが納得してくれた
たったひと目でわかったから
言い訳なんていらなかった
君は大抵一番で
大きく差をあけて自分は二番目
なんて思い上がっていたんだ
君がいなければもしかして
君がいなければ
君がいなければ、しかして
間違い探しみたいな比較対象を並べて
明るい暗い軽い重い大きい小さい
ほんとうにそんな事?
一番を取れなかった言い訳
一番に寄せろって、超える気ないの?
こんな事なら君に
わかりやすく叩きつぶされて終わりたかった
君みたいになりたかった
「勝ち負けなんて」