マトリカリア

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4/7/2024, 10:39:56 AM

 ※虫の話part2! それほど掘り下げてはいませんが。



 いきものの眼状紋、いわゆる目玉模様があんまり好きじゃない。大好きって人も少ないと思うけど。
 クジャクの羽を例に挙げれば手っ取り早い。あとはマトウダイなんかの魚類、その他いろいろな動物の、主に頭以外の部位に見られる模様だ。天敵から身を守るためとか、襲われたとき大事な頭を守るためとか言われるけれど、はっきりとした理由はわかっていないらしい。

 で、眼状紋のなかでもいちばん強烈なのが蝶や蛾だと思っている。そのものずばりメダマチョウだのジャノメチョウだのがいるくらい。噛んだり刺したりする虫に比べて穏健派、とみせかけて、不気味な目玉模様をひけらかす。そのアンバランスさがどうにも得体が知れない。
 つまり虫が苦手な私にとっては輪をかけて恐ろしい存在ということで。
 ぽっかり穴が開いたような黒目の模様。シンプルに怖い。まあ小技きかせて瞳にハイライトの白い点を入れてるやつはなんか腹が立つけど。
 しかも単なる模様だから、はたと目が合ってもまばたきも反らしもしてくれない。虫に慎みや恥じらいはないのか、なんて言われても当人たちも困るだろうが。
 生存戦略の前では、見つめられる気まずさなんてたやすく霞んでしまう。



(君の目を見つめると)
 

4/5/2024, 10:01:54 AM

 気難しくなったのか、それとも淡白になったのか。
「それがいい」より、「それでいい」より、
「それしかない」と感じることが増えたこの頃。



(それでいい)

4/4/2024, 10:45:58 AM

 愛してるよ。
 結婚したら白い家を建てて犬を飼おう。
 世界でいちばん幸せな奥さんにするよ。

 そう言ったのに。
 嘘つき。嘘つき。あんな男死ねばいい。
 ……
 …………

 無機質な取調室。向かいに座る年配の刑事は重っ苦しくため息をついた。

「ひとつでも貰いたいって男心を利用するとは、つくづく女はこわいねえ」

 机に並んだ写真には、通い慣れたマンション、見慣れたドア、使い慣れたティーカップ。
 そしてカップのそばのパステルピンクの紙の箱。三×三で区切られたチョコレートの小箱。
 今日中に全部食べてねと言ったら、おれを糖尿にする気かよ、なんて苦笑してたっけ。

「教えてください。あの男は死にましたか」
「……今朝がた息を引き取ったそうだ」

 ああ、神様!
 思わず快哉を叫んだ。よかったじゃない、病気にならずに済んで。
 うつむいて笑いを噛みしめていると、ふと手もとの写真が目に入った。
 九個のマスに並んだチョコレート菓子。

「……違う」
「は?」

 トリュフ、マカロン、ブラウニー。オランジェットにチョコレートバーにチョコチップクッキー。さくらんぼのへたが付いたボンボンらしきものに、胡桃かなにかが入ったパウンドケーキ。
 違う。私が作ったのは一種類だけ。いちばん簡単なチョコレートバーだけ。あとのは知らない。
 
「違う! 私じゃない!」
「おいおい……」

 半狂乱になって刑事に訴える。九個のチョコレート、そこだけぽっかり空いたマスを睨んだ。
 あの男がひとつだけ食べたチョコレート。
 それが私のものじゃないことが、死ぬほど悔しい。



(一つだけ)

4/3/2024, 10:46:43 AM

 大切と大事ってなにが違う?
 はっきり使い分けてはいないかなと思う。強いて言えば、大事は「価値」、大切は「思い入れ」に重きを置いている気がするくらい。
 あとは、大切は濁らないけど大事はふたつも濁点が付くぶん、ちょっとだけ重々しい、かもしれない。
 グリム童話の白雪姫も、昔は「ゆきじろひめ」だったのを、語感を整え取っつきやすくするため「しらゆきひめ」にした、なんてエピソードを聞いたことがある。

 それはさておき、大切なもの。
 私の場合はコアラのぬいぐるみ。
 幼稚園に上がる前から一緒だった。
 さすがに持ってないと寝られない、なんて時期は卒業したけど、それでも腕に抱いて床につく(そして朝起きると足もとに吹っ飛んでたりする。なんでだろう?)。

 彼はコアラらしく木に掴まるようなポーズで座っている。それで少しななめを向いているのが、左胸に抱いたときものすごくしっくり来るのだ。安定感がはんぱない。ユーカリの大木になった気持ち。
 ココア色のボディと、傷んでごわごわになった耳。破れたおなかを母が「しゅじゅつ」してくれた跡。見た目はずいぶんと薄汚れてしまった。
 彼を見つけてくれたのは二番目の姉だ。親子で行った幼稚園のバザーで売られていた。隣にいた子が欲しそうにしていたので、慌てて私のところまで持ってきたという。

 なにがきっかけだったかもう思い出せないけれど、コアラが好きだった。
 それを家族みんな承知していたのだろう。まだ元気な頃よく可愛がってくれた祖父は、コアラのためだけに大阪の天王寺動物園へ連れていってくれた。当時家から行ける距離でコアラが見られるのはそこだけだったのだ。
 父は父で淡路島のイングランドの丘へ何度も行ってくれた。せっかちな人なのに、コアラのエリアでは何十分眺めていても急かされたことがない。
 鹿児島旅行で寄った平川動物公園も言わずもがな。アルバムはコアラの写真でいっぱいだ。

 思い出したら寂しくなってきた。今日はちょっと早めに寝よう。
 コアラ君。
 朝までちゃんと腕のなかにいてね。



(大切なもの)



 22:00訂正、平川動物公園は行ってました。
 ユメ、リオ、バンビオ君。可愛かったなあ。

4/2/2024, 10:13:38 AM

 あー、なんも嘘つかなかったな。
 いつも過ぎてから気づく。
 少しもったいないことした気持ちになる。
 見たい番組見逃したときみたいに。



(エイプリルフール)

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