うも

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3/31/2026, 11:33:48 AM

「幸せに」


がらんとした部屋で小さめの段ボールを開ける。


中には可愛らしいぬいぐるみやキーホルダー、マグカップなどが窮屈そうに詰まっている。

ひとつひとつの品に彼との思い出が詰まっていて、記憶が脳みそをゆっくりと巡る。

巡っていく速さや深さから、彼との日々が濃くて尊いものだったと思い知らされる。

時間はあまり経っていないのにこの頃の自分がとても若く見えて、眩しかった。

まだ見慣れないひとりきりの部屋にきらきらした思い出は似合っておらず、再び段ボールに蓋をする。


彼との日常が消えないように。

いつだって思い出せるように。

かすかな残り香さえ失いたくなかった。


食器や化粧品に日用品…などなどもっと他に荷ほどきしないといけないものは山ほどあるのに、私は未だに過去に縋り続けている。

未来しか見ていない彼とは正反対に、私だけがまだ子どものままだった。


明日から4月で、私も彼も地元にいない。

もう、会うことはないんだなと改めて思う。

確かに一緒に過ごしたはずのあの日々は、あっという間に新生活で塗り替えられて消えてしまうのだろう。

彼が今何をしているのか、
誰といるのか、何を想っているのか。

夢を追いかける彼を支えることのできなかった私には、
そんなこと知る権利がない。


ただ“元カノ”ってだけで一丁前に偉そうだけど、

そんなことは分かっているけど、

せめて最後に、あなたの幸せくらいは願わせてほしい。


わがままな願いを、ダンボールと共にクローゼットの奥に押し込んだ。


壁にかかった明日着るスーツを、しばらくその場で眺めていた。

3/29/2026, 11:20:21 AM

「ハッピーエンド」


大学生にもなるともうどんな話題から始めようとも最終的には恋バナにたどり着く。

毎回私にも話のターンが回ってくるが、言えるようなことが何もないためいつも当たり障りのないことを言っているのだが。


うーんでも可愛いんだからいつかできるよ!と言う言葉が心からの言葉ではないことは顔を見れば分かる。

どこか下に見られているのをうっすらと感じるのだ。


恋愛が全てではない、と思うのは負け惜しみだろうか。
みんなが恋愛に飛び付く必要はないんじゃないかな。
何をもって“幸せ”とするかは人それぞれなのだよ。


正直にいうと、

大好きな人と一緒に

大好きな映画や小説を楽しみながら

大好きなお菓子を食べることが私の幸せだ。


その暮らしの延長線上で死にたい。

それが私の、私だけのハッピーエンドだ。


そう考えながら今日も今日とて。

3/28/2026, 3:18:37 PM

「見つめられると」



見つめすぎて、あなたの瞳に吸い込まれそうになる


なんてことが実際に起こると思わなかったと君は言う。

俺の目がとても綺麗だと。

言われ慣れない褒め言葉に、ありがとうと普通すぎる返答をするほかなかった。


やめてくれ。見ないで。

吸い込まれようとしてるでしょそれは。


君を吸い込んでしまうとばれてしまうじゃないか。

気持ちを見透かされそうで怖いんだよ。

見つめられると、調子が狂う。

1/31/2026, 7:34:47 AM

「あなたに届けたい」


珍しく時間に余裕を持って家を出て、グループLINEに送られてきていた居酒屋へと足を運ぶ。


今日会うのは、数週間前の成人式で再会した中学校時代の同級生だ。

当時は男女で仲が良かったが、今考えると不思議で
仕方ない。

今日も同窓会の日と同様、大して面白くない地元ノリを聞き、愛想笑いを浮かべることになるのだろう。


そんなこと分かりきっているのに、

あなたに会える、たったそれだけで

いつもはつけない香水を振り、メイクを濃くした。


当時と何も変わらない、何も起きないと分かっていながらも淡い期待を抱くことをやめられない。


あなたにだけ、響けばいい。

あなたにだけ。


雑に振られる現在の恋愛事情も、
その返答に隠された想いも、

あなたにだけ届けばいい。

1/2/2026, 12:11:30 PM

「今年の抱負」


昼食か夕食か、はたまたおやつとしてなのかもはや分からないくらいだらだらとずっと食事をしていた。
もしかしたらまだ朝ごはんかもしれなかった。

部屋の中にはずっとお笑い番組が流れていて、漫才やコントを贅沢にBGMとして扱いながらスマホを見る。

しばらくそうしているとぱっと画面が変わった。電話だ。名前を見て自然に口角を上げる。

テレビの音量を下げながら「もしもし?」と応えると、
「彼氏くん今なにしてんのーん」と陽気な声が聞こえる。

「いやね、昨日会ったとき今年の抱負聞き忘れたなって思ってさ」

思ったより内容しょぼいなという声は心にしまう。

『逆に彼女さんは今年の抱負決めたの?』と聞くと

待ってましたと言わんばかりに自分の抱負を語り出した。しっかり聞いていないが、要は今暇していたということだ。

「で、抱負なに???」
もう一度俺のターンが回ってくる。多分興味は無い。
惰性で聞いているだけなのが声だけで分かる。

『うーん早寝早起きかな』

普通すぎるな一周まわって珍しいなどの茶々が飛ぶ。

「そんなこと言ってー、ほんとは私と来年も幸せに生きることでしょ?」


おっと図星

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