バズ母

Open App
11/17/2023, 8:24:49 AM

はなればなれ

娘が結婚してはなればなれになるのは喜ばしい事だ。
母子家庭のうちは、娘が生まれて半年のときから、保育園に入れて、私は一緒懸命に働いた。狭いアパートで寄り添って暮らしていた。娘がそばにいてくれたら、何でもできた。
大学も行かせて、やっ成人して、私の肩の荷もおりた。
彼氏ができて、結婚しますと聞いた時は本当に嬉しかった。
でも、やっぱり、この狭いアパートから娘が出て、はなればなれになるのは寂しい。
またいつか帰っておいでなんて言えない。言いたいけど、言えない。
「幸せになりなさい。お母さんは大丈夫だから、旦那さんの事を幸せにしてあげるのよ」
と伝え、涙を止める。

11/16/2023, 2:51:31 AM

子猫

昔、捨てられていた子猫を拾ってきた事がある。親に見つかると絶対に怒られるので、自分の部屋の押し入れの奥にスペースを作って入れていた。
子猫はお腹が空くと泣くんです。
そんな事当たり前なのに、これなら絶対に見つからないと思い、学校にも行った。学校から帰ると、母が押し入れの子猫はどうしたの?と私に詰め寄る。
元のところに置いて来なさい。と言われ、泣きながら置きに行った。飼ってあげるなんていうハッピーエンドで終わらなかったその事実は、私の心の中にいつまでも燻っている。誰かが、きっと飼ってくれていると思いながら。
母が悪い訳ではない。生き物を飼うって本当に大変な事だ。
大人になって自分で犬を飼っている私は、その大変さを知っている。
でも、子猫を見ると幼い頃の事を思い出す。
少し切ない思い出です。

11/15/2023, 9:54:24 AM

秋風

秋風は冷たい。冬の始まりを告げる風。
帰ってダウンを出そう。
彼と手を繋ごう。
彼の胸で温かく寝よう。
秋風が二人の中を近づける。

11/14/2023, 1:57:45 AM

また会いましょう

二十三歳の頃、私は乳癌だと診断された。五年の生存率は五分五分。手術が必要と言われ、手術をすると右の乳は全て無くなる。それでも転移があれば絶望的だ。二十三歳で結婚もしていない。生きていられたとしても、いつも再発に怯え、乳がないという劣等感を抱えることとなる。
そんな負のオーラの中、海で一人泣いていると、見知らぬ男性から声をかけられた。
「海を見ていると泣きたくなる時がありますよね。大丈夫ですか?何があったか僕にはわかりませんが、あなたの涙はきっと海が受け止めてくれますよ。そして、あなたを支えてくれるのは海だけじゃない。きっと、たくさんの人が力になってくれます。
はい、コーヒー。
突然、声をかけてすみませんでした。普段はこんな事しないんです。あなたには何故か声をかけたくなってしまいました。
今度また、あなたに会える事があったら笑顔のあなたに会いたいですね。また、会いましょう。」
と言って、彼は去って行った。

あれから五年。右の乳は無くなったが、私は生きている。そしてこれからも生きて行けるような気がする。
あの時の彼が私の横にいてくれるから、、、。私達は結婚した。
生きる素晴らしさと、愛を教えてくれた彼を永遠に愛している。

11/13/2023, 2:23:06 AM

スリル

スリルを求めて訪れた所は、人里離れた山の中。奥に奥にと車で行くと、車一台が辛うじて通れる、小さなトンネル。ここは霊が出ると有名な心霊スポット。
大学二年生の男二人と、女二人の四人。飲み会で意気投合して、心霊スポットの話になり、予定を設定して、今日ここまで来た。
都会では熱帯夜が続く毎日だが、ここは肌寒い。
「ね〜ここやっぱりヤバくない?戻った方がいいんじゃない?」
「スリルのある事したいって言ったのは、お前たちだろ。ここまで来て戻るのかよ」
そう言われると何も言えなくなり、車は前進する。
トンネルに入って直ぐに一瞬、何が前を横切る。恐怖で固まる。そして次の瞬間。パタパタパタパタとフロントガラスに無数の手形。最後にバックミラーに髪の長い女性の顔。
それから私達はどうやって帰って来たのか、記憶がない。恐怖と帰って来られた安堵の中、それぞれの家に辿り着き。シャワーを浴びるため裸になる。ふと、鏡に写った自分の背中。その中央にくっきりと誰かの手の痕がある。私はそのまま、意識を失う。
目が覚めたら病院のベッドだった。背中の手の痕はなくなっている。その後は何も起こらなかったが、私はもう二度とあの場所には行かない。そして、二度と語ってはいけない事だと感じ、一緒に行った友達ともあの時の話はしなかった。他の三人も同じで、誰も口に出すことはなかった。

皆さん、スリルを求めて危険な場所に行くのはやめましょう。
そっとしておかなければいけない所は、そっとしておいてあげるのが一番だと思います。

Next