スリル
スリルを求めて訪れた所は、人里離れた山の中。奥に奥にと車で行くと、車一台が辛うじて通れる、小さなトンネル。ここは霊が出ると有名な心霊スポット。
大学二年生の男二人と、女二人の四人。飲み会で意気投合して、心霊スポットの話になり、予定を設定して、今日ここまで来た。
都会では熱帯夜が続く毎日だが、ここは肌寒い。
「ね〜ここやっぱりヤバくない?戻った方がいいんじゃない?」
「スリルのある事したいって言ったのは、お前たちだろ。ここまで来て戻るのかよ」
そう言われると何も言えなくなり、車は前進する。
トンネルに入って直ぐに一瞬、何が前を横切る。恐怖で固まる。そして次の瞬間。パタパタパタパタとフロントガラスに無数の手形。最後にバックミラーに髪の長い女性の顔。
それから私達はどうやって帰って来たのか、記憶がない。恐怖と帰って来られた安堵の中、それぞれの家に辿り着き。シャワーを浴びるため裸になる。ふと、鏡に写った自分の背中。その中央にくっきりと誰かの手の痕がある。私はそのまま、意識を失う。
目が覚めたら病院のベッドだった。背中の手の痕はなくなっている。その後は何も起こらなかったが、私はもう二度とあの場所には行かない。そして、二度と語ってはいけない事だと感じ、一緒に行った友達ともあの時の話はしなかった。他の三人も同じで、誰も口に出すことはなかった。
皆さん、スリルを求めて危険な場所に行くのはやめましょう。
そっとしておかなければいけない所は、そっとしておいてあげるのが一番だと思います。
11/13/2023, 2:23:06 AM