また会いましょう
二十三歳の頃、私は乳癌だと診断された。五年の生存率は五分五分。手術が必要と言われ、手術をすると右の乳は全て無くなる。それでも転移があれば絶望的だ。二十三歳で結婚もしていない。生きていられたとしても、いつも再発に怯え、乳がないという劣等感を抱えることとなる。
そんな負のオーラの中、海で一人泣いていると、見知らぬ男性から声をかけられた。
「海を見ていると泣きたくなる時がありますよね。大丈夫ですか?何があったか僕にはわかりませんが、あなたの涙はきっと海が受け止めてくれますよ。そして、あなたを支えてくれるのは海だけじゃない。きっと、たくさんの人が力になってくれます。
はい、コーヒー。
突然、声をかけてすみませんでした。普段はこんな事しないんです。あなたには何故か声をかけたくなってしまいました。
今度また、あなたに会える事があったら笑顔のあなたに会いたいですね。また、会いましょう。」
と言って、彼は去って行った。
あれから五年。右の乳は無くなったが、私は生きている。そしてこれからも生きて行けるような気がする。
あの時の彼が私の横にいてくれるから、、、。私達は結婚した。
生きる素晴らしさと、愛を教えてくれた彼を永遠に愛している。
スリル
スリルを求めて訪れた所は、人里離れた山の中。奥に奥にと車で行くと、車一台が辛うじて通れる、小さなトンネル。ここは霊が出ると有名な心霊スポット。
大学二年生の男二人と、女二人の四人。飲み会で意気投合して、心霊スポットの話になり、予定を設定して、今日ここまで来た。
都会では熱帯夜が続く毎日だが、ここは肌寒い。
「ね〜ここやっぱりヤバくない?戻った方がいいんじゃない?」
「スリルのある事したいって言ったのは、お前たちだろ。ここまで来て戻るのかよ」
そう言われると何も言えなくなり、車は前進する。
トンネルに入って直ぐに一瞬、何が前を横切る。恐怖で固まる。そして次の瞬間。パタパタパタパタとフロントガラスに無数の手形。最後にバックミラーに髪の長い女性の顔。
それから私達はどうやって帰って来たのか、記憶がない。恐怖と帰って来られた安堵の中、それぞれの家に辿り着き。シャワーを浴びるため裸になる。ふと、鏡に写った自分の背中。その中央にくっきりと誰かの手の痕がある。私はそのまま、意識を失う。
目が覚めたら病院のベッドだった。背中の手の痕はなくなっている。その後は何も起こらなかったが、私はもう二度とあの場所には行かない。そして、二度と語ってはいけない事だと感じ、一緒に行った友達ともあの時の話はしなかった。他の三人も同じで、誰も口に出すことはなかった。
皆さん、スリルを求めて危険な場所に行くのはやめましょう。
そっとしておかなければいけない所は、そっとしておいてあげるのが一番だと思います。
飛べない翼
やりたい事は沢山ある。皆んなとカラオケに行きたい。可愛い服を着てみたい。アイドルのコンサートに行ってみたい。友達の家に泊まって、朝までワイワイお喋りしたい。そして、恋がしたい。
私は翼があるのに、その翼は飛べない翼だ。
翼の下はアザだらけ。お酒に酔った父から、毎日のように殴られる。父が怖い。
でもあともう少し、高校生活もあと3ヶ月。高校を卒業したら、寮のある会社で働く事になっている。
そうしたら、この飛べない翼は大きくなって、大空を羽ばたいてくれるだろうか?きっと大丈夫!
私を助けてくれる。
父が私の翼をもがないうちに、、、。
私はじっとその日を待つ。
ススキ
ススキの野原で、うさぎがぴょ〜ん。
まんまるお月様に、うさぎがぴょんぴょ〜ん。
脳裏
とあるスキー場。リフトで山の上まできて、目の前はパウダースノー。私の脳裏に浮かぶのは、パウダースノーを蹴散らせながら、カッコよく滑る自分の姿。心が躍る。あ〜なんて気持ちがいいのだろう。
さ〜行くわよ〜!
はい!!ボーゲン、、、。
ドテッと転ぶ。痛い、冷たい!
だから、スキーは嫌いなのよ!
ど〜するのよ!下まで、ど〜するのよ!