視線の先には
私は老人介護施設で働く介護福祉士です。
満床50人のフロアで、入浴介助や食事介助、排泄介助などを行なっている。自立している人なんてほとんどいません。
昨日から今日は夜勤でした。夕食の食事介助から始まり、夜間の排泄介助、見守り、様々な訴えの対応を職員2人でやります。
今日も夕食後、パジャマ更衣や排泄介助、臥床介助をしてやっと落ち着いたのは21時半。自分達も食事をして、記録を書く。
記録を書いている時に、ナースコール
「ご飯は?」
「さっき食べましたよ」
「食べてな〜い。嘘つき〜。殺す気か〜」
温かいココアを提供し落ち着く。
ナースコール
「起きる」
「夜中なので寝ましょうねー」
納得し寝る。
ナースコール
「起きる」
「夜中ですよ〜」
寝る。
ナースコール、、、、、。繰り返す。
ナースコール
トイレ誘導する。その5分後、ナースコール。トイレ誘導する。
その10分後ナースコール、、、トイレ、、、。
「もう出ないと思いますよ〜」
寝る。
杖をついてふらふら部屋から出てくる。
「帰る」
「夜中なので明日にしましょうねー」
寝る。
「ギャ〜‼️」
寝言。
無事に朝ごはんを提供し、日勤者に申し送りをして、
「皆さん後は宜しくお願いします。なんとか皆んな転倒しないで良かったです」
一緒の夜勤者に気をつけて帰るように言い、自分も退社する。
一晩中歩いてもう足は限界。
帰りの電車の中で爆睡したけど、降りる駅で目を覚ましてセーフ。
帰って少し食べて、3時間ぐらい寝たところで目が覚める。
愛犬はどこにいるかと目で探すと、愛犬の視線の先にはマイリード。
「散歩ですか?お母さんはまだ動けません。どうかお一人でご近所を周って来てください」
とお願いしましたが、そんなわけにはいかず、重たい足を引きずりながら愛犬の散歩にいきましたとさ、、、終わり、、、。
私だけ
娘によく言われる。
「お母さんさ〜本当にカタカナ弱いよねー」
私が〝フィスティバル”って言ったら〝フェスティバル”だよと笑われた。
電気屋で〝ディスクトップ”があるか定員に聞いたら
「デスクトップだよ」って娘に言われた。
〝人間ドッグ”に行こうか相談したら
「人間のような犬になるのかよ」と、、、。
今度、〝eランニング”を受けるって言ったら
「eラーニングだよ。お母さんは一体どこ走るの?」と言われた。
スーパーで〝アボカド”のポップを見て〝アボガド”だよねーって言ったら、無視された。
〝ギブス”も〝ギプス”なんだって、、、
〝バトミントン”も〝バドミントン”なんだって、、、
私だけ?
違うよ!昭和のおじちゃん、おばちゃんは皆んなそうだよ!
遠い日の記憶
父は大工をしていて普段は寡黙な人だった。 父が帰ると必ず1番に風呂に入り、夕食の時は父の好きな野球を観ながら食べた。マンガが観たいなんて言えなかった。
妹と喧嘩をすると、うるさいと言われ2人で外に出された。
母は優しく、そっと裏から入れてくれた。
父はお酒が好きで、少し酔うと笑ってくれた。普段、笑わないから嬉しくなったのを覚えている。
父は大工だから本当は男の子が欲しかったんだろうな〜っていつも思っていた。
そんな父だったけれど、夏は必ず多摩川の花火大会に連れて行ってくれた。
「くるぞ、くるぞ〜ほ〜らでかいのきた〜
あれはナイアガラの滝っていう花火だ すごいだろ〜
連発花火だ!綺麗だな〜」
と、私と妹に上機嫌で話してくれる。
花火大会が終わると一斉に皆んな帰るため、ぎゅうぎゅうに混雑する。
父は妹をおんぶし、私の手をぎゅと握る。
「絶対に離れるなよ」
と言って痛いくらい握ってた。
父は60歳で亡くなった。癌だった。
私ももうすぐ父が亡くなった歳になる。 夏の花火を見ると父を思い出す。
夏の遠い日の記憶である。
空を見上げて心に浮かんだこと
社会人5年目。暑いビル街を急ぎ足で歩く。 昨日、手配した荷物の中身が違っていると、相手はかなり苛立っていた。
何度も確認した。どこで間違ったのだろう。
電車を乗り継いで2時間。長閑な田園風景。 そこからタクシーで1時間。やっと着いた工場の事務所で工場長を呼んでもらう。
工場長は
「おまえたちはバカにしているのか! こんな図面で何ができる!
この型も違う!
クーラーの部屋でタラタラ仕事してるからダメなんだ!」
僕はひたすら頭を下げる。
1時間怒られて、やっと解放された。
工場を出て、ふーっと息を吐きながら空を見上げる。僕は空高く飛ぶ、白球を思い出す。
学生時代は野球選手に憧れていた。
グラウンドを何周も走り、バットを何百回も振った。 一年中休みなく、朝も夜も白球を追いかけた。
毎日、毎日つらい練習をして甲子園を目指したけれど、願いは叶わなかった。
でも、後悔はしていない。仲間と共に打ち込んだ日々は、生きていくために何が大切かを教えてくれた。
青空が果てしなく続いてる。急に野球の事なんて思い出してどうしたんだろう。1時間のお説教は効いたな笑。
さー会社に帰って報告書を書こう。僕は何があったって負けない。白球が消えたこの空に誓って、、、。
終わりにしよう NO12
夏の日差しは強い。地面は光と影にくっきり分かれている。
今日はお母さんとお買い物。夏休みに友達とプールに行くから水着を渋谷のデパートに買いに行く。
嬉しさでじっとしていられない。
そうだ!影を踏んじゃいけないゲームしよう!
玄関を出て近所のおじさんとすれ違う。〝ぴょ〜ん”おじさんの影を跳んだ。 バス停でバスを待っている間、車の影を〝ぴょ〜ん ぴょ〜ん” バスが来た。バズの中は休憩時間。
バスを降りてからも数人の人の影を〝ぴょ〜ん ぴょ〜ん”
お母さんに
「何しているの早く歩きなさい」と怒られる。 それでも〝ぴょ〜ん ぴょ〜ん”
電車の中は休憩時間。電車の中は涼しいな〜。
「しぶや〜しぶや〜」
降りてびっくり!すごい人、人、人、、、。
影を踏んじゃいけないゲーム、終わりにしよう。
地面は影しかない!