手を取り合って NO11
彼女が何度も突然倒れる。電車の中で、仕事中に、友達の結婚式で、、、。 病院で自己免疫脳炎と診断される。自分の身体の中で作られた抗体が脳を攻撃する。
彼女はとうとう僕がわからなくなった。 幼い子供になり、笑ったと思うと泣き叫ぶ。手がつけられなくなり、薬で眠らされた。
だんだんと呼吸が上手くできなくなり、人工呼吸器に繋がれた。
彼女と僕は今年、結婚するはずだった。 医者は血清交換という治療をすれば良くなるが、後遺症が残ると言われた。彼女の両親は娘の事は忘れてほしいという。
彼女を忘れる事なんてできなかった。 彼女の全てが好きだった。 僕の全てだった。
そして5年が経った。
彼女は僕の横で笑っている。 記憶障害が残りメモを取らないと直ぐに忘れる事が多いけど、目を覚ました時、僕の事はちゃんと覚えてた。
車椅子になったけれど、彼女は辛いリハビリに耐えた。
バージンロードはお父さんに車椅子を押してもらったけど、愛を誓う時は自分の足で立ちたいときかなかった。大丈夫!立てるよ
この日の為に頑張った君を知っている。
さー立ってごらん僕が支えるよ。
手を取り合って、いつまでも、、、。
優越感、劣等感 NO10
僕は高校1年生。
短距離走が得意。100mを12.5秒で走る。
僕が走ると女子は
「すご〜い♡ 佐藤く〜んカッコいい♡」とキラキラした目で僕を見る。
一緒に走ったやつを尻目に、優越感。
国語の授業。先生が
「1ヶ月を単位として契約などをきめるという意味のこの漢字読めるか。佐藤!」
〝月極”
「え〜っと?〝つきごく”です!」
女子が爆笑。
先生
「佐藤は漢字弱いなぁ〜」
同じクラスの生徒に、劣等感。
これまでずっと NO9
これまでずっと友達ができないのは自分が悪いんだと思ってた。
バイトはしているけどお金がなく、新しい服も買えず同じ服ばかり着てる。美容院にも行けず髪はボサボサ。食事に誘われても行けず自宅で1日1食。どんどん体重も減る。
それでも明るく過ごそうと頑張っていたけど、誰も友達になってくれない。というか私に近寄っても来ない。
なぜ?なぜなんだろう?
ある日、公園で途方に暮れていると、知らない男の人に声をかけられた。
「君、貧乏神がついてるよ」
「えっ!」
「今、貧乏神がピースしてる」
そうかそうだったのか私自身が悪い訳ではなかった。貧乏神のせいだったのか。
良かった。安心した。
いや、安心していられない、貧乏神とお別れするのはどうすればいいのだろう、、、?
誰か助けて、、、。
1件のLINE NO8
学生の頃はそれなりにできていた。なのに社会に出るとダメ人間になる。会社では仕事がもらえない。誰も認めてくれない。
大学の時から付き合っていた彼女にも、他に好きな人ができたと言われフラれた。
死にたくなる。
28歳で死ぬなんて父はどう思うだろう。
僕は父子家庭で育った。父は寡黙な人だったけれど、僕の為に一生懸命だった。そんな父が3年前に癌で他界した。
「父さん、僕はどうしたらいい、、、」
その時、1件のLINE
〝おまえは小さい頃から人前で話をするのが苦手だったからな〜
でもおまえは文章力はあった。小学校の作文コンクールで賞も獲っただろ^_^ あれは嬉しかったな〜
捨て猫を拾ってきた事もあった。泣きながら飼ってほしいというから仕方なくマリと名前をつけて飼ったよな おまえは一生懸命面倒をみたな マリもここでおまえに感謝しているぞ^_^
おまえは優しい子だ
俺が入院した時も最後は家に連れて帰りたいと医者に話してくれて、家で2人で過ごす事ができた。
俺は本当におまえに感謝している
人生なんてうまくいかない事ばかりだ。 おまえは母親をずっと知らずに育った。 俺はずっと申し訳ないと思っていた。でも優しい人間に育ってくれた。
おまえは俺の自慢の息子だ。
辛いことから逃げてもいい。
だけど俺のところにはまだ来るな。 わかったな亮太、、、”
父さん、、、。
LINEのアイコンを見ると、幼い頃の僕と父が、並んで笑っている写真だった。
父さん、俺頑張るよ。だからまたLINEくれよな。
ありがとな。
目が覚めると NO7
朝、目が覚めると全身毛むくじゃらだった。口周りは泥棒みたいなヒゲ、手足も毛が伸び、手背から指までびっしり毛が生えている。
脇の下が生えているのはわかる。いや?こんな毛量はわからない、でもまだ許せる。許せないのはこの胸毛だ。 私は女だぞ!
しかも27歳。今が1番綺麗な時ではないか。 そして今日、彼氏に絶対、プロポーズされると思う。 鏡で自分の姿を見て終わったと思った。 でもプロポーズへされたい。 そうだ!毛は剃ればいい。 永久脱毛は間に合わないけど、今日はとりあえず剃ってしまおう。
5時間かかって毛を剃った。カミソリは10本ダメにした。
全身がカミソリ負けして痛い。
今日は彼にホテルに誘われても断ろう。 化粧もしてなんとか誤魔化せそうだ。
待ち合わせのレストランに着いた。 彼がいない。探していると後から声をかけられた。彼の声だ。 でもそこにいたのは、ツルッツルの毛が全くない彼だった。 そうだよねー私は剃れるけど、1日じゃ〜毛は植えられないよね〜 可哀想に、、、
目が覚めた、夢だった。
彼がツルッツルになってないか心配だけど会いに行こう!