【叶わぬ夢】
夢を見た。
きっと夢だと思う。
だって私の好きな人が私を抱き締めている。
それはきっと夢でしかない。
現実では有り得ない光景。
私の想いびとはいつだって私に冷めた視線を撫でかける。
私はその度心をきゅっとさせるのだ。
だから夢でもあなたに抱き締められると嬉しさと愛おしさで胸が苦しくなる。
目頭に涙が滲む。
これが現実ならどれだけ願ってももう後悔はないのに。
【花の香りと共に】
思い出すのは、君から溢れくる花の香り。
何処かでまた会えるだろうか?
名前も顔も知らない。
ただ一瞬通り過ぎただけのことでしかないのに。
それでも会いたいと願えば想いが溢れる。
硝子(ガラス)の中に散りばめた色とりどりの華やぐ花達。
そこにゆっくりと熱湯を注いでいく、香りがたちまち鼻腔を擽(くすぐ)った。
そして、花開く。
これで少しは君を感じることが出来るだろうか。
花の香りと共に。
【心のざわめき】11
双子に掴まれてかれこれの時間になる。
「ねえ、そろそろ離してくれない?」
ディ·ダム「「やだ!」」
「え~…」
駄目元で請うも即座に却下を喰らう。
「私これから行かなきゃいけないところがあるの。だからお願い離して?」
ディ·ダム「「…」」
う~ん。そんな捨てられた仔犬のような目で見上げないで。
絶対自分の可愛さ分かっててやってるだろ。
ディ「…なら、また戻ってくるって約束してくれる?」
「え?」
ダム「約束してくれるなら解放してあげる」
「…」
約束。何て容易くしていいものか?
何故なら私はここの世界の住人ではない。
ただの他所から来た異邦者(いほうもの)でしかないのだ。
だけど。
「…いいわ。約束する」
私は容易く約束をしてしまった。
きっともう会うことも、戻ってくるという保証もないまま。
ディ·ダム「「本当!?」」
「ええ」
それでも私は取り繕った笑顔を浮かべた。
心の奥がざわめいたのとチクりと胸が痛んだ気がした。
「きっとまた会いましょうね」
私は双子に別れを告げ、先を進み始めた。
【君を探して】
頭の中に声が響いている。
誰ともわからない懐かしい声が。
私はまだ探している。
諦めていない。
2つに別れた私の半身。
この世界の何処かにきっといる。
私は一人じゃない。
あなたがいると思うと
私はまだ頑張れるよ。
【透明】
不透明なもの程手に入れたい。
不確かなもの程気になってしまうのは。
私がもう透明ではなくなってしまったからなのか?
純粋ではいられない。
生粋なままでは生きていけない。
不純物の塊。