【ひらり】
ひらりひらり-
ひらりひらり-
見上げれば満開の桜たちが我先にと舞を披露している。
私はその中に埋もれるように横になった。
もう誰にも傷つけられない。
手の届かないところへ行こう。
ひらりひらり-
ひらりひらり-
目を開けても閉じても私の世界は桜色一色。
【誰かしら?】7
真っ直ぐに伸びた道もしばらく歩くと三つの分かれ道に辿り着いた。
ひとつは双子道。
ひとつは白兎の家。
そして最後はイカレ帽子屋とその仲間達の集い。
と綴られた看板が。
「普通なら白兎の家、よね。…だけど」
先ほどから、軽快な音楽がずっと楽し気に森の中に響いていた。
「気になりすぎる…」
好奇心旺盛な性格が私の良いところであり悪いところでもある。
だけど。
「気になるものはしょうがないよね!」
私は音楽の鳴る、イカレ帽子屋とその仲間達の集いと言う道を選んだ。
【芽吹きのとき】
永い眠りから今目覚めたあなた。
世界はあなたにとって良いものか、
それとも闇色に心を染められてしまうのか。
それはきっとあなた次第。
【あの日の温もり】
陽だまりのようなあなたに私はいつも守られていた。
私を抱きしめるあなたの腕が大好きだった。
私を呼ぶあなたの声が心地好かった。
私の頭を撫でるあなたの大きな手。
私の手を包み込んだあなたの優しい手の温もり。
全部が私の宝物。
あなたが好きよ、いつまでも。
【さぁ冒険だ】6
「さて、どうしたものか…」
私は途方に暮れていた。
だってそうだろう。
小さくなったものの、鍵がないとここを通ることは出来ないと来たもんだ。
だったら大きい時に言ってくれれば良いのに…。
「ねぇ、どうにかしてここを通ることは出来ないかしら?」
扉「無理だね」
「そこをなんとか!」
扉「…」
黙秘するなんて卑怯者め。
と言うより、扉なんだからこれが普通なんだよね。
「もう一度大きくなれたらな」
?「だったら私をお食べ!」
「…」
うん。知ってた☆
「あらあら美味しそうなクッキー!」
私はわざとらしく大袈裟に言い放った。
そこにはこれまた可愛らしいお菓子箱が立っていた。そう。立っていた。
「あなたを食べればまた元の大きさに戻るのね?」
クッキー「そうよ!だから私を食べて!」
「…」
本当にこんなのを食べてお腹壊さないかしら?
クッキー「さぁっばさぁ!」
「…いただきます」
私は箱を開けて1枚クッキーを摘まんだ。
そして思いきって口へと放り投げた。
「…!」
すると、小さかった体がみるみる大きくなっていくではないか。
私はテーブルに手が届くほどになると、手紙を手にした。中にはお城への招待状と小さな鍵が入れてあった。
「やった!これで外に出られる」
私はそれらをポケットにしまうと、再び先程のキャンディーを口にし小さくなった。
「どう!これで外に出られるわよね!?」
扉「そんなに勢いづかなくても、鍵を差し込めば自然と外に出られるよ」
そう言うが早い。私は鍵を鍵穴に差し込んで時計回りに回すとやっとこ扉の外へと出られた。
「さぁ、これからが冒険の始まりよ!」
私はお城へと続く真っ直ぐに伸びた道を歩き始めた。