M氏:創作:短編小説

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10/23/2023, 6:12:12 PM

荒くなった息
重たい足取り
逃げてるはずなのに怖くは無い
いや怖い
まるで鬼ごっこをしてて
捕まっても特に痛い思いをしないと言うか
それが大前提で分かってて
そんな中鬼に見つかって追われてる感じ
雑居ビルより一回り大きい感じのビルで
迷路みたいな道を走って
自分はやっぱり誰かに追われてて
階段を降りたら捕まると思って
とりあえず登って
学校みたいな階段を登って
扉を開けたらやっぱり学校みたいな屋上があって
トイレの鍵を閉める感覚で屋上の扉を閉めて
プールとか何重にもある柵とか
そんなの気にせず登っては飛び越えて
鍵を誰かがガチャガチャと開けようとしてて
振り向いたらお父さんが居て
まぁ他にも大人が居たんだけど
あの人だって分かるのがお父さんで
自分と目が合ったらなんか叫んでたから
『パパは僕の事作って良かった?』って
大声で叫んでから最後の柵を飛び越えたら
「馬鹿な事をするな」ってぼんやり聞こえて
お父さんってあんな声してたんだとか
お父さんってあんな顔してたんだとか
そんな事を考えてたら
目が覚めた
ボサボサになった髪を撫でて欠伸して
ボーッとした脳みそのままタバコを吸う為にベランダに出て
空気が凄く冷たいのに陽は暖かくて
空は異様に綺麗だった


題名:何処までも続く青い空
作者:M氏
出演:?????????????????????


【あとがき】
夢を見ました
忘れないうちにネタにしとこうと書きました
M氏は自分が思った以上にファザコンです
飛び降りてしまおうと考えてた時に懸命に鍵のしまった扉を開けようとした父親を見てめっちゃ笑顔になりました
寂しかったです辛かったです殴られたくなかったです愛されたかったです普通の家族らしく居て欲しかったです
夢の中の自分は救われたのか分からないけど
久しぶりに父親の顔を見て“パパ”と呼べた気がします
ザッと15年ぶりくらい
嬉しかったです

10/22/2023, 10:51:24 AM

「コレは〜…寒い」
「コレ着てたな〜」
「ヤダコレ型崩れてる〜絶対お父さんが洗濯したやつだ〜」
「コレ可愛い〜うちセンス良!」
「こっちは着そうだけどこっちはな〜」
「うちってワンピ着ないんだな〜」
「え?最近ハマってるメイクに合わん」
「去年どんな顔してたっけ?」
「うっわぁ嫌〜そうだこういうのしてた」
「コレ今年も着よ〜」
「ぁ゛、んぃ〜コレあんま似合わんって言われてたやつ〜」
「でも可愛いんだよな〜」
「いや、メイクちょっと変えれば行ける?」
「アクセ買っちゃお♡」
「コレ欲しい服に合うもんな〜」
「可愛い!採用!」

『瑛梨〜?アンタいつまでやってんの〜』
「ごめん!今めっちゃノッてきたからご飯後で!」
『早く食べなさいよ〜』
「はーい!お母さん!着ないのって古着に売って良い?」
『従兄弟にお下がりしても良いんじゃない?』
「あーそっちもあるか〜じゃあ分けとくから残ったのは売っちゃうね〜」
『そうしなー』

「んでこっちは着るやつでアレは着なくて」
「今年流行りの色なんだっけな〜」
「ヤダすっごい可愛いの売ってる〜欲し〜」
「また買いに行こ!」

「お母さん着るやつ1回洗濯して〜!」
『アンタ少しは自分でもやりなさいよ』
「家に居るうちはお願い♡」
『仕方ないわね〜』
「ありがと〜」
『やっとくから早くご飯食べなさい』
「はーい!」


題名:衣替え
作者:M氏
演出:🍤


【あとがき】
会話だけの小説は初めて書きましたね
こんな服かな、あんな服かなって皆様が想像を楽しめる範囲の会話にするのは難しいかったです
ですが日常会話で“多分こうしてるのかな”が伝われば良いですね
出演してくれた彼女のようにオシャレさんな人は衣替えも一苦労しそうです
M氏は服に無頓着な方なので着れれば何でも着ますね
周りに似合うよと言われたら“じゃあコレにするか”くらいで
着れるうちはどんなに流行りに合わなくても着ます
なんならジャージでも着てろよと言われた時に学校指定ジャージを着てたくらいです
オシャレさんな事をしてないので表現が難しく書くのも少し一苦労でした本当に
読んで頂きありがとうございました

10/21/2023, 11:45:30 AM

愛されたい
ただそれだけだった
この願望が強いのは母の血なんだろう
男に懸命に贈るラブコールを
冷めた視線で貫くのはいつもの事

ヒステリックに皿を割る
私は悪くないと叫ぶ
キーキーと甲高い悲鳴が響く
小さな声では彼女を振り向かせる事も出来ない

『そうよ、あの人』
『あの人との子よ』
『きっとそうよ』

ブツブツと独り言を語る母
その姿を横目に小さな手でカップ麺にお湯を入れる
白髪混じりの黄緑色の髪
元は自分と同じ色だった

寂しい

『どうして出ないの』
『もういい、メールで…』
『いつも電話には出ないんだから…』

携帯に指を滑らす息の荒い女の姿
あんまり見ていて気持ちの良いものでは無い
でも他に見るものが無い

使いづらい大人用のフォークで持ち上げた熱い麺を
尖らせた唇で懸命に息を吹きかける
まだ熱いけど食べれる範囲だ

『ひめ!ひめちゃん!こっちにおいで!』
「あっつ…!」

唐突に腕を引っ張られる
カップ麺が倒れてテーブルだけじゃなく床も汚した
服も汚れたしスープがかかった手がヒリヒリする

『ちょっと!何やってんの!』
『早く行かなきゃいけないのに…』
『さっさと着替えて!』

手当をされる事もなく自室に押し込まれる
今までもこうやって外に連れ出される事はあった
父親に会えるよと言われて
でも誰も居ないし来てくれない
その度に母はヒステリックになって家で物を壊す

どうせ誰も来ないのに…



寒空の下で母と待つ
寒くとも母は手を繋いでくれない
両手はずっと携帯を弄る為に使われている

指先を擦り合わせて掌に息を吐く
ふわふわと白い吐息が揺れる
また数時間も待つのかな

眠いしお腹も空いたし
寒いよ辛いよ
誰か助けてよ

ふわりと背中が暖かくなる

指先を暖める事に夢中で下げていた視線をあげた
銀色の髪を緩くまとめて
赤い切れ長の瞳視と線が交わる
長い睫毛や整った顔立ち
柔らかな笑顔

『寒いかったでしょ?。』

背中が暖かいのは目の前に居る彼が自分の着ていたコートを貸してくれたからだ
彼はわざわざ視線を合わせる為にしゃがんで
長身に合わせた丈の長いコートが地面に触れるのも気にせず己に貸してくれた

『遅れてごめんねハニー。』

大きな手で冷えた頬を包んで
少しばかり伸びた自分の髪に触れて
肌の色も髪の色も瞳の色も
全部違う自分を優しく抱き締めた

『その子“緋姫(ひめ)”って言うの。アナタの子でしょ?』

彼は擦り寄ろうとする母に視線を向けずに
自分を軽々と抱き上げた
ポンポンと厚手のコートに包まれた背を撫でながら

『もちろん、このコは私の子供です。』

低音の優しい声が耳に響く
貴方の子供と言われた事は沢山あった
代わる代わる違う人に見せられて

貴方の子供
貴方の子供
貴方の子供

母にも言われた事が無かった
“自分の子供”と認められる事が一度も無かった

『█████』

彼は涙を零す自分に何かを言ってくれた
何年か経ってあの時の言葉の意味を知れた
日本語で“泣かないで、愛しい我が子”と言う意味

母の気持ちが分かった気がした
愛されてるのは酷く嬉しくて酷く不安になる事
愛しているのは酷く楽しくて酷く苦しい事

あの人に愛されてるのは僕だけだよ

アナタだけを愛してる
自分だけのモノになってくれないアナタを
ずっと盲信して叫び続ける
僕を救ったのも壊したのも愛したのも
全部アナタだと


題名:声が枯れるまで
作者:M氏
出演:🧷


【あとがき】
自分の子じゃないと否定された事はありますか?
逆に否定した事はありますか?
言われなくとも気づいてしまった事はありますか?
言ってなくても思った事はありますか?
人間は愛情が無いと生きられず、そして歪みます
出演してくれた彼は誰にも認められずに物心をつけました
冷めた感情を胸に諦めてばかりでした
そんな心に一粒でも一滴でも
ぬくもりが産まれてしまったら
縋りたくなりますし盲目になりますし
独占欲が産まれて不安になってしまいます
愛される事は幸せであり不幸である
不幸と分からない程にずっと幸せで居続けるなんて
不可能なんですよね
難しいですね

10/20/2023, 12:16:07 PM













『初めまして』













此処で出会えたのも何かの縁
アナタの時間をワタシにください
画面越しに見るアナタの顔

『いつも眺めさせて貰っています』

細い手足がなぞる身振り手振り
こんな文字列じゃ伝わりはしませんでしょう
荒れて痩けた白頬をどんなに歪めても

『アナタは何も見えていないでしょう』

ええ、知っていますとも
字ばかりが描く世界とやらを
指先を緩く動かす行為で摂める

『アナタの世界に“ワタシ”は要らないのです』

ですが、そんなワタシにもですね
誰かに何かを届けたいと言う願望はありまして
貰い物ばかりがアナタの視線を左上にズラした先に貯まりまして

『贈り主が誰かなんて分かりませんが』

贈られてばかりと言うものは気が引けます
されど贈り主の見えぬ匿名の世界では
ワタシの想いも酷く一方的でしょう

『アナタが指をなぞらせるのと同じで』

運良くワタシは気分が良い
心の形を彷彿とさせるだけありますね
もし形が不快を思わせるのだとしたら

『ワタシが送る全てが刃のように鋭かったはず…』

ワタシは自分の都合に合わせて曲解します
どうか指先にはお気を付けて
感情と言うのは己では何一つ制御出来ないのだから

『アナタもきっと同じでしょう』

話が脱線しましたね
誰かに何かを贈りたいと言う気持ちは
誰かから何かを贈られて初めて抱くものです

『だから指先にお気を付けください』

アナタが抱く不快
ワタシが抱く不快
誰かが抱く不快

『今の時代は己の指先一つで決まるんですから』


題名:始まりはいつも
作者:M氏
出演:?????????????????????


【あとがき】
最後まで読んで頂きありがとうございました
生きにくい世の中ですがどうかお気を付けて
今の時代に石橋を叩く人は存在しないのですから
“転ばぬ先の杖”精神で息を吸いましょう
アナタもワタシも‪✕‬なないように

10/19/2023, 10:45:40 AM

不貞行為を繰り返す夫と真面目な妻の間に産まれた
言葉も喋れない頃に母が姉を連れて逃げた
物心付いた頃には殴られた
‪✕‬ねばいい、‪✕‬ねばいいと何度も繰り返された
齢8にして父を‪✕‬した
正当防衛だった
‪✕‬すしか無かった
拾われたのだって面白そうだったから
でもそこで愛情を知ったし
温もりを知った
「今更どうしろって言うんだよ」
‪✕‬✕‬歳の少年

不貞行為を繰り返す夫と真面目な母の間に産まれた
毎日泣く母を慰め弟の世話をした
母が手を取り逃げる時
理解も出来ずに弟の身を案じた
案じるだけだった己に心を病んだ
心身壊れる母の背に心を病んだ
繰り返される入退院にまともなんて無かった
私は母も捨てた
仕方の無い事と諭すには心が弱かった
残った希望は貴方だけだった
私と一緒に普通の生活をしよう
「お願いだから分かってよ」
‪✕‬‪✕‬歳の少女



痛かった
苦しかった
辛かった
でも誰にも届かない
僕は成功作だから
耐えられる
耐えられてる
痛くないこと
苦しくないこと
辛くないこと
大丈夫
大丈夫
「…サイは平気です」
‪✕‬‪✕‬歳の少年

物心ついた頃から身体を開く事が当たり前だった
‪✕‬くても苦しくても辛くても
これが世のため人のため
出来ないのなら、耐えれないのなら処理対象と言われた
私は失敗作だった
どんなに泣いても喚いても私は処理対象
弟はそれを見てるだけ
‪✕‬くて怖くて‪✕‬くて怖くて
だから貴女に救われた時に
撫でられた時に涙が出たの
‪✕‬いは未だに分からないけど
辛いって苦しいって嫌だって
言っていいって言われたから
「私の名前はベルよ、ササはもう居ないわ」
‪✕‬‪✕‬歳の少女



この世がつまらなくて仕方が無かった
縛り付ける事にしか脳が無い大人が苛立つ
顔色ばかり窺う癖に影では嘲笑を肴にする子供に苛立つ
ニンゲンが嫌いで仕方が無かった
バケモノになりたかった
だがバケモノは思いの外大変で
ニンゲン離れも程々にすべきと感じた
避ける私を追い掛けて
興味本位で付き合って
ちゃんと教えてくれたから
私に君は不釣り合いだったのかもしれない
「よく聞こえる声で泣くなよ、ハニー。」
‪✕‬‪✕‬歳の少女

この世がつまらなくて仕方が無かった
求められるから熟して
頼まれるから受け入れる
バケモノだと言われても求められたからしてるだけ
ニンゲンとバケモノの差ってなんだろう
ニンゲンらしくないで言ったら君も俺も変わらない
機械のような自分はニンゲンらしくないらしい
ならニンゲンらしさを教えてよ
生物ってなに?
ちゃんと教えてくれたから
君しか居ないんだろうなって思い込んでた
「なんでアイツばっかり責められるんだよッ!!」
✕‬‪✕‬歳の少年



何処か心が空っぽだった
母は自分を産むと同時に亡くなった
父は仕事に明け暮れて家に居ない時の方が多かった
学校にも行けてたし友達だって居た
食事だってきちんと食べれてる
服だって毎日洗濯できるし着てるし
帰る家だってある
でも満たされなかった
周りはそれすらも感じさせない
楽しげに充実した普通を歩んでる
それに比べて自分は?
何がしたいんだろう、何を目指してるんだろう
何も出てこなかった
だから初めて見た美しさに惚れた
欲しいと思った
創りたいと思った
手に入れたいと思った
それ以外要らないとさえ思った
「俺っちにはコレしか無いんスよ」
‪✕‬‪✕‬歳の少年

優しい両親が居て
朝起きたら遅刻を仄めかされて
焦るのにも関わらず朝食だけはちゃっかり食べて
行ってきますと声に出して
授業ダルいなんて友達と笑い合って
オシャレなお弁当を頬張って
最近流行りのメイクで盛り上がって
疲れるのに楽しい部活を終わらせて
帰宅途中に出会う幼なじみに絡んで
家に帰って旅行の話でもしながら夕飯を食べて
スキンケアで長引く入浴を終えて
ベッドに飛び込みスマホを弄る
そんな普通がずっと続くと思ってた
貴方が美しさに惚れて普通から飛び出すまで
「たまには帰らないと…おじさん不安だと思うよ」
‪✕‬‪✕‬歳の少女


題名:すれ違い
作者:M氏
出演:🎗💜‪/🎲🔔/🌧☀️/📸🍤


【あとがき】
冷静に考えれば伝わる言葉とか
第三者目線に立てば納得出来る感情とか
人がすれ違う瞬間ってそれくらいくだらない事が多いですよね
M氏もそんな形で誰かとすれ違う事が多いです
誰かの意見に惑わされて交友を断ったり
言葉足らずな想いをネガティブに受け取って勝手に傷付いたり
きちんと落ち着いて話すだけで解決出来ちゃったりするんですよね
それが出来るのなら人間は苦労しないんでしょうけど
皆さんはすれ違ったな、アレは何とかできたなって思う経験ありますか?
すれ違いとは気付いた頃には手遅れになるものばかりですが
それが後悔になって自尊心を削り始める前に
腹を割って誰かと話すのは大事だと思ってます
ですが正直と歯に衣着せぬ物言いをイコールにするのはオススメ出来ませんよ
言葉は難しいので沢山考えましょう
向き合うってそういう事だと思います

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