ロイチ

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4/20/2023, 8:01:47 AM

もしも未来が見れたなら

もしも昨日の自分に、未来が見られる能力があったなら

飲み会ドタキャンした人間の分のコース料理しっかり食べ切ったりしない
一番若いんだからの声に押されて食べたりしない

そんな若くない
気持ち悪い
すごい体重になったぞお前

4/18/2023, 3:22:11 AM

「サクラサク、だって」
「知ってる。A判市内校だからな」
「こっちはサクラチル?」
「わざわざ受験生煽る文言書くかよ」
「機嫌悪いねぇ、お腹空いた?今日は唐揚げがいいな」
「第一志望に落ちたから落ち込んでんだよ、合格出てんだから今日は俺のお祝いに決まってんだろ、何リクエストしてんだ」
「そんなに怒んないでよ。いーじゃん、春からも一緒の学校だよ?」
「だから市内より偏差値低い県外を第一志望にしたんだけどな。これで向こう三年までお前に振り回される未来が確定したわけだ、くそ」
「振り回してませーん。好きなことしてるだけなのに止めたり突っ込んだり助けたりフォローしたり勝手にしてるのはそっちでーす」
「お前の好きなことはもう人外の域なんだよ」
「その人外を目の届かない所に放ったところで、心配で胃に穴があく未来しか見えなくない?」
「どの口が」
「あっ、あの子もあの子も合格だって!みんないっしょ!」
「………おい」
「うん?」
「大人しくしとけよ」
「……どうかな。楽しいことがなければ、オトナシクしてられるよ」
「くそつまらねぇ学校生活を祈るよ」
「そこは寺の子なんだし仏さまに一発祈っとこ。なーむー」
「おいやめろ」

 コイツの前では神も仏もいない。何度目かに思い知るのは、二週間後の入学式。
 満開の桜が一陣の風で全て散り去る怪事件。薄気味悪さと重苦しい空気が校内を駆け抜け全校生徒がザワつく中、無邪気に目を輝かせ「残念だったね」と俺に言ってのけたあの憎たらしい顔を、生涯忘れないだろう。

#桜散る

4/16/2023, 10:53:06 AM


――此処以外なら、どこでも良かったのに。

 そう呟いた横顔が、ひどく青かったことを覚えている。
 淋しげでもなく、悔しげでもなく、自嘲するでもなもなく、抜け落ちたような、何も見ていない視線で。
 それなら逆に何処なら最善だったと思うか問うと、「此処以外の全て」と、きっぱり言ってのけた。
 つまるところ、此処に立つ全て、全てが現状間違っているのだと。

 なるほど確かにと、納得してしまう自分に無性に腹が立ち、わざと投げつけた。
「なら、出会わなければ良かった」。
「なら、何かが消えれば良かった」。
「なら、誰かが欠ければ良かった」。
 白けた目で刺された。
 
 分かっている。唯一望まない「此処」だから、選ばれたのだ。
 此処以外の何処にも、互いの瞳の色を知る場所なんて無いのだ。
 それでも時々思う。此処では無いどこかで、すれ違うだけの互いであったなら、どれほど幸せだったろうかと。

#ここではない、どこかで

4/15/2023, 2:13:58 PM


 はーい、新入りの皆さん、揃いましたね。揃ってなくても始めます。

 皆さん、「想い廃棄課」へようこそ。

 廃棄なんてマイナスなイメージしかありませんが、ここが我が社のある種の花形であることは、きちんと企業研究してくれた皆さんならご存知かと思います。
 説明なんか省略して実地の研修に入りたい所ですが、上司からきちんとやらないと減給だと脅されているので最初から説明します。
 我が社の取り扱う商品は「想い」です。喜怒哀楽に単純に分類されない、それこそ多種多様な想いの受注・生産・販売・配達・回収・廃棄を担っています。
 そこの君、我が社の想い産業におけるシェア率は?……そう、99%です。説明の通り、「想い」の流通を一手に引き受けられる規模に人材、システムが整っている証ですね。まあ人材については万年不足気味なのを騙し騙し回しているのですが、これはその内嫌でも実感してもらえるので今は触れません。
 ゴホン、そしてその世界一の流通の最終地点、それが廃棄です。
 はいそこの君、この廃棄課の通称は?……そう、「流れ星課」です。
 それではここからは実際の流れを見つつ説明するので、ついてきて下さい。

 まずこちら、回収課から集められた想い達を分類するラインです。
 ざっくり「綺麗・そのまま・汚い」を機械で選別した後、職員の手と目で更に細かく分類します。あっとぉ、こちらはまだ見ないで下さいね〜、見なくて大丈夫ですよ〜。分類班勤続10年以上のベテランしか扱えない「想い」なので、君たちが見たら卒倒しちゃうからね〜。

 さ、次は溶解・攪拌作業です。ここで1万℃以上に熱せられた想いたちは一度どろっどろに溶かされ、その後じっくりゆっくり冷やされます。
 一定の温度まで下がったら、冷め切る前に捏ねます。
 見てください!ここです!ここが課内っていうか我が社で一番の肉体労働部屋!ひたすらに!想いを!こねこねする!!均一の濃度になるまで!均一の硬さになるまで!ひたすらにこねこね!!
 見てほらあの方がここのエース!上腕二頭筋!キャー!…………三年目までにひと月は絶対ここに配属されるんで覚えておいて下さいね〜。

 こねこねされた「想い」を成形します。まるまるスベスベ、ソフトボール大に。作業班の目が死んでるように見えるのは気のせいですよ、気のせい。
 ささ、次こそが流れ星課の所以、最終廃棄作業です。

 「想い」の廃棄時期は決められています。年に4、5回。そこまでに貯められた成形済みの「想い」たちを一斉に下へ流します。
 ああ、良かったですね、今日はちょうど今期の最終日。ノルマ達成のために一番多く流される日です。
 大抵の「想い」はそのまま流され燃え尽きるだけです。溶かされ捏ねられた時点で元々の「想い」としての自我は完全に消失しますから。
 ただごく稀に、光る「想い」が出現します。あ、ほら!アレがそうです!見えました?
 光る原因や要素は、現時点では究明には至っていません。ただまあ、なんとなーく、勘づいてはいるというか、皆思い当たる節があるというか。だからこそ、研究が進まないんでしょうね。「何故だか光る」。そういうことにしておきましょう。

 そうそう、「想い」が流れていく過程では面白い現象が観測されてます。ここよりずっとずっとずーっと下の世界では、光り流れゆく「想い」に願えばそれが叶うとかいう俗信が、もう千年以上流布されているんですって。
 ほらほら、笑わない笑わない。気持ちは分かるけどね。
 もはや原型なんて無い、誰のものでもない何の力も持たない、ゴミへ祈る滑稽さを、知っているのはボクらだけなんだから。笑っちゃいけないよ。
 それにほら、もしかしたら将来、我が社が事業拡大して下の世界の「想い」も扱うかもしれない。そうしたらあの滑稽もここへやって来て流れるわけだから。

 というわけで、ざっとではありますがこれで説明会を終わります。質問は……まあおいおい現場で出てくるだろうから今は受け付けません。
 え、何です?質問は受け付け……………やっぱり他の課がいい?
 ははっ、それは君、それこそ君、


#届かぬ想い

4/14/2023, 11:28:30 PM

 神様と言われても、何か具体的な事物が浮かぶわけではない。
 かと言って、無神論者になれるほど心が強いわけでもない。

 祖父母の家には仏壇があるし、正月は神社へ初詣、盆は寺へ墓参り、クリスマスにはケーキとチキンで一週間後にはまた正月。ケルト発祥のハロウィンも一応楽しんで、セントウァレンティヌスの斬首日にはチョコをばら撒く。

 それでいて、ピンチの時には「カミサマ助けて!」なんて言ったりもする。
 じゃあこの時祈ってる「カミサマ」って何だろう。
 信ずる者がいて初めて「神」が成り立つなら、逆説的に祈っている先は自分の信ずるものなんだろうか。
 
 困った。そうだとしても、具体的な事物が浮かばない。
 本当は信じているものなんて無いから、だからいつもいつも助けは来ないし願いは叶わないのか。なるほど。

 これから先も「カミサマ助けて!」は使用予定だけど、それが名も実も無い空虚への呼びかけであることは自覚しておこうと思う。

#神様へ

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