――此処以外なら、どこでも良かったのに。
そう呟いた横顔が、ひどく青かったことを覚えている。
淋しげでもなく、悔しげでもなく、自嘲するでもなもなく、抜け落ちたような、何も見ていない視線で。
それなら逆に何処なら最善だったと思うか問うと、「此処以外の全て」と、きっぱり言ってのけた。
つまるところ、此処に立つ全て、全てが現状間違っているのだと。
なるほど確かにと、納得してしまう自分に無性に腹が立ち、わざと投げつけた。
「なら、出会わなければ良かった」。
「なら、何かが消えれば良かった」。
「なら、誰かが欠ければ良かった」。
白けた目で刺された。
分かっている。唯一望まない「此処」だから、選ばれたのだ。
此処以外の何処にも、互いの瞳の色を知る場所なんて無いのだ。
それでも時々思う。此処では無いどこかで、すれ違うだけの互いであったなら、どれほど幸せだったろうかと。
#ここではない、どこかで
4/16/2023, 10:53:06 AM