「サクラサク、だって」
「知ってる。A判市内校だからな」
「こっちはサクラチル?」
「わざわざ受験生煽る文言書くかよ」
「機嫌悪いねぇ、お腹空いた?今日は唐揚げがいいな」
「第一志望に落ちたから落ち込んでんだよ、合格出てんだから今日は俺のお祝いに決まってんだろ、何リクエストしてんだ」
「そんなに怒んないでよ。いーじゃん、春からも一緒の学校だよ?」
「だから市内より偏差値低い県外を第一志望にしたんだけどな。これで向こう三年までお前に振り回される未来が確定したわけだ、くそ」
「振り回してませーん。好きなことしてるだけなのに止めたり突っ込んだり助けたりフォローしたり勝手にしてるのはそっちでーす」
「お前の好きなことはもう人外の域なんだよ」
「その人外を目の届かない所に放ったところで、心配で胃に穴があく未来しか見えなくない?」
「どの口が」
「あっ、あの子もあの子も合格だって!みんないっしょ!」
「………おい」
「うん?」
「大人しくしとけよ」
「……どうかな。楽しいことがなければ、オトナシクしてられるよ」
「くそつまらねぇ学校生活を祈るよ」
「そこは寺の子なんだし仏さまに一発祈っとこ。なーむー」
「おいやめろ」
コイツの前では神も仏もいない。何度目かに思い知るのは、二週間後の入学式。
満開の桜が一陣の風で全て散り去る怪事件。薄気味悪さと重苦しい空気が校内を駆け抜け全校生徒がザワつく中、無邪気に目を輝かせ「残念だったね」と俺に言ってのけたあの憎たらしい顔を、生涯忘れないだろう。
#桜散る
4/18/2023, 3:22:11 AM