トゲピー

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2/11/2026, 4:26:11 PM

古びた階段を登った先の、誰も来ない屋上の隅。

僕の足はなんとなくここへ向かっていて、
その横には君がいつもいてくれている。

この場所に行く理由。
それは、逃げるためだと思う。
教室のざわめきから、
他人の視線から、
「普通」のふりをする自分から。

君の横顔が、光のせいでよく見えない。
「ここにいると、余計なことばかり考えてしまう。」
君がぽつりとこぼしたその言葉に、
僕の心の奥がわずかに軋んだ。

僕は逆だった。
ここに来ると余計なことを考えなくて済む。
居心地がよかったのは、僕だけだった。
そのことに少し寂しさを覚えた。

君はときどき、何か言いかけてやめる。
僕が聞いても「なんでもない」って首を振る。
深くは聞かない。
言いたくないなら、それでいいと思った。

僕は君と並んで、
同じ空を見ていられるこの時間が好きだ。
最初は逃げるためだったこの場所が、
いつしか君と二人でいられる大切な場所になっていた。

君と二人きりのこの時間を、
誰にも渡したくないと思うことがある。

どうしてそんなふうに思うのか、
うまく説明はできないけど。

今はまだ、そのままでいい。


「この場所で」

2/9/2026, 3:12:56 PM

誰にも渡せなかった花束を持って家に帰った。
水に挿すこともできず、
玄関に置いたまま灯りを消した。

朝になっても、
花はまだきれいだった。
それが、
いちばん悲しかった。

「花束」

2/7/2026, 5:22:48 PM

どこにも書けないこと
それはこの想い
書いてしまったら
名前がついてしまうから

「どこにも書けないこと」

2/6/2026, 8:44:28 PM

君の時計は僕を置いて
どんどん進んでいくのに

僕の針は君がいた時間で
ずっと止まったままだ

たくさんの季節が
僕を追い越して、
進めない理由だけが増えていった

それでもいつかは
僕の名前を呼ぶ声が、
風に揺れるまつげが
思い出に変わって
僕の時計の針はまた動き出すのだろう

いつしか別の誰かと笑う僕が
この恋をやさしく思い返せたら

君を好きだったあの頃の僕は
きっとちゃんと進んでいける

「時計の針」

12/7/2025, 12:07:18 PM

夏なのに、君の吐息が白い

蝉の声も、熱々のアスファルトも、
確かに、夏だった
その中で、君だけが涼しい顔をして立っていた

君の息が白くなるのは一度きりではなかった
でも、僕は何も言わなかった
夏の日差しの強さに言い訳をした

君は汗をかかない
制服のシャツも長袖のままだ
それでも、僕は何も言わなかった
そのまま時間だけが過ぎていった

日が傾いて、蝉の声が遠のき
ひとつだけの足音がやけに大きく響いた

ふいに冷たい風が吹き
あのときの寒さと重なった
その瞬間、
思い出してはいけない記憶が鮮明に蘇った

白い息が当たり前だった朝
僕の名前を呼ぶ声が、途中で途切れたこと

君の息が白い理由なんて、
最初からわかっていたのに
僕は気付かないふりをしていた
ずっと気付かないままでいたかった

急いで後ろを振り返ったが、
そこには白い吐息しか残っていなかった


「白い吐息」

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