古びた階段を登った先の、誰も来ない屋上の隅。
僕の足はなんとなくここへ向かっていて、
その横には君がいつもいてくれている。
この場所に行く理由。
それは、逃げるためだと思う。
教室のざわめきから、
他人の視線から、
「普通」のふりをする自分から。
君の横顔が、光のせいでよく見えない。
「ここにいると、余計なことばかり考えてしまう。」
君がぽつりとこぼしたその言葉に、
僕の心の奥がわずかに軋んだ。
僕は逆だった。
ここに来ると余計なことを考えなくて済む。
居心地がよかったのは、僕だけだった。
そのことに少し寂しさを覚えた。
君はときどき、何か言いかけてやめる。
僕が聞いても「なんでもない」って首を振る。
深くは聞かない。
言いたくないなら、それでいいと思った。
僕は君と並んで、
同じ空を見ていられるこの時間が好きだ。
最初は逃げるためだったこの場所が、
いつしか君と二人でいられる大切な場所になっていた。
君と二人きりのこの時間を、
誰にも渡したくないと思うことがある。
どうしてそんなふうに思うのか、
うまく説明はできないけど。
今はまだ、そのままでいい。
「この場所で」
2/11/2026, 4:26:11 PM