夏なのに、君の吐息が白い
蝉の声も、熱々のアスファルトも、
確かに、夏だった
その中で、君だけが涼しい顔をして立っていた
君の息が白くなるのは一度きりではなかった
でも、僕は何も言わなかった
夏の日差しの強さに言い訳をした
君は汗をかかない
制服のシャツも長袖のままだ
それでも、僕は何も言わなかった
そのまま時間だけが過ぎていった
日が傾いて、蝉の声が遠のき
ひとつだけの足音がやけに大きく響いた
ふいに冷たい風が吹き
あのときの寒さと重なった
その瞬間、
思い出してはいけない記憶が鮮明に蘇った
白い息が当たり前だった朝
僕の名前を呼ぶ声が、途中で途切れたこと
君の息が白い理由なんて、
最初からわかっていたのに
僕は気付かないふりをしていた
ずっと気付かないままでいたかった
急いで後ろを振り返ったが、
そこには白い吐息しか残っていなかった
「白い吐息」
12/7/2025, 12:07:18 PM