ぺんぎん

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11/21/2023, 12:36:33 PM

きみの写真を一枚一枚ごみ箱に捨てていかなければならない、家に帰ったなら、温めあった日とともに毛布を裂かなければならない、果たしてわたしはその痛みに耐えられるのだろうか、問いただすまえに体を海に叩きつけた。つめたい飛沫があがり、どうしてもどうしてもひとりだった。

11/17/2023, 4:53:52 PM

わたしはきみの背中に文字をかいた。これが最後になるだろうし、ほんとうは、愛してるとか、離れないでとか、長々かくのもいいと思ったけれど、わたしがかいたのは、わたしの名前だった。たいして、珍しいわけでもなく、平たんな名前だったけれど、きみにそうやってして与えているときだけは、その空間ごと、奇跡の連続のようでぴかぴかとかがやいて見えていた、そのことを思い出したかった。すすり泣くようなきみの寝言にまぎれて、冬が濃ゆくなった。

11/14/2023, 12:50:06 PM

さむいさむいって、地獄をかみ砕いているようなきみの顔がほんとうに寒そうでうれしくて、ふいに、それはそれは自然に、冬がきたことを口実に、とつぜん、ゆびにゆび、お腹にお腹、ぴたり合わせてみたり

11/11/2023, 2:42:11 PM

ふたりで会う日をきめると会えない日々に息が詰まった。そのたび木犀の匂いでごまかしていた。いま、羽をのばすように手のひらをそうっと宙に掲げてみせて、それに絡めてくれるきみの指があった。いい加減ひとつになりそうだった。夕暮れに外がみるみる冷え込んでゆく、きみはもうどこにもいかない、その確証があってよかった。くっついてもはなれたくなくなる寒さがあるから、冬はすてきだった。

11/6/2023, 2:17:54 PM

ぼくは昨日きみにいちばんすきな映画をみせた、きみが何も言わずにただ泣いてくれて、ただよかった。あらゆるひかりに照らし出されて、きみのほおの雨が、朝をため込んだ川面のようにまたたき、きみを存在させる輪郭が危うくなる神秘的な瞬間が、またよかった。

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