わたしはきみの背中に文字をかいた。これが最後になるだろうし、ほんとうは、愛してるとか、離れないでとか、長々かくのもいいと思ったけれど、わたしがかいたのは、わたしの名前だった。たいして、珍しいわけでもなく、平たんな名前だったけれど、きみにそうやってして与えているときだけは、その空間ごと、奇跡の連続のようでぴかぴかとかがやいて見えていた、そのことを思い出したかった。すすり泣くようなきみの寝言にまぎれて、冬が濃ゆくなった。
11/17/2023, 4:53:52 PM