ぺんぎん

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9/29/2023, 3:40:25 PM

そうっとまばゆい月あかりのもとで、いまあらためて気づく。きみの顔にはてんてんてんといくつかそばかすがあり、なめらかな肌にまじる星のようなこそばゆいかがやきがこれまでもこれからもだいすきだ、と。ささやかなひかりのちらばるきみの鼻に、すこし時間をおき、つめたいぼくのくちびるを合わせるとき、たしかにふたりはふたりのままであるのに、たがいの体の輪郭を忘れてしまうほどに、ぼくらはひとつになっている。

9/28/2023, 1:25:07 PM

きみに、たったひとつ、ささやかないじわるをするために、秋の海にしゃがみこんだことを忘れない。近くでひろったシーグラスを便箋いっぱいに詰めておいた。きみに、それがわたしの骨であるかのように思ってほしかった。ただよう潮くさいにおいをだいて、たまにそれをを枕もとのひかりにかざし、わたしのことをときどき思い出して、胸のうちを痛めてほしかった。

9/28/2023, 9:48:51 AM

ふたりで、さびれた美術館に行き、どこにも誰ひとりいないことを確かめてみて、気が遠のくほどたくさんの時間をかけてすべて見回り、とうとうふたりとも、それに飽きてしまえば、埃をかぶった額のそばで、まるで自分たちそのものが作品集のうちのひとつであるかのように、ふたりのどちらかが笑いだすまで、熱情のままに見つめあっていよう、きみの鼻のてっぺんに自分の鼻をくっつけて、くすぐったい気持ちになったらそのまま子供みたいなキスを浴びせあおう

9/26/2023, 1:17:52 PM

いちょうをかさかさと踏みしめ、ぼくの顎をぐいと掴み、きみはもっとも危うい口づけをした。お互いに、しんでしまいそうなほどに唐突で熱情的だった。ぼくらは、窒息のきわまでそれを続けうんともったいぶってくちびるを離したが、ぼくはべつに、そのまま、口をあわせたまま、酸欠でばったり倒れてもよかった。いちょうのもとでかがやきながら見つめあうのは、あまりにもしあわせなことだった。

9/24/2023, 11:04:55 AM

秋、すきま風で目覚め、きみのかさついたくちびるにそうっと、指の腹でリップクリームをつける。きみのくちびるの頼りない体温に、もっとあたたかいわたしの体温、きみの隣で、燃えるように生きられるよろこびがふたりの狭間で脈動している。

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