ぺんぎん

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8/7/2022, 1:43:25 PM

君、頬を這いだす金魚のような赤を掌でないまぜにしたの
蜻蛉の声が喉をなぞって胸のあたりに辿り着いて
目眩のなかでちいさな蜘蛛を靴音と躙ったあの日みたいで惨めで
行きつく場もない雨が閉じこもった部屋の片隅に飲み込まれていく
射し込んだぬるい血の味がぽつり、また鼓動がどくりと喚いた
まだ此処の通り雨に溺れていたくて

8/7/2022, 1:43:33 AM

藻に絡まっためだかみたいに
こんな部屋の隅っこで縮こまったままで
孕んだままの卵の中身を確かめるように腹をなぞるように
たしかな愛情に怯えて僅かにたゆたう尾びれに口づけをして

8/6/2022, 12:18:25 PM

ねえもし君が此処から居なくなった朝でも
噎せかえるような蚊取り線香の煙たい味にうんざりして
ウイスキーの熱を喉に這わせて、蝉の啼き声ごと飲み干してしまって
何にもなかったように眠って僅かな陽の色で目を覚ますんだろうな

8/6/2022, 12:10:21 PM

びりびりにしたはずの婚姻届が口に押し込まれた
たった一枚の紙きれが身動きもとれないくらいに身体中を縛りつけている
ぬるりと喉を滑り落ちた刺が、ぱっくり裂けた傷に墜ちて
万華鏡に閉じ込められたかのような甘い幻覚が纏わりついた
乾いた唇が僅かに開きかかってひくついた
一生溶けてはくれないだろう傷を今だけは愛していて

8/5/2022, 3:13:13 PM

からんころんちりんと耳障りな音が
やけに明るい部屋の片隅に飲み込まれていく
どっと噴き出した熱が身体とか心臓とかを薄っぺらい膜にして覆う
口に押し込まれたままざらりと喉を滑ったのはきっと苦味を閉じ込めた愛情
ちかちかと頭のてっぺんまで明るくて苦しさとか痛みとかぜんぶ溶けてって
涎がベッドシーツを這う、鳴りやまない警鐘ががんがんと脳内を殴り付ける
狂おしいほどに、愛に溺れるのがまだ怖くて堪らないや

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