Rapi

Open App
9/21/2023, 5:32:07 PM

それは恋ではなく、恨みでも友情でもない。

誰かがそれを愛だといった。

ならば、ワタシは...



「本日付で護衛に就任しました!
フリンクです!よろしくお願い__ったぁ!?」

「すみませんね。コイツうるさくて。」

「構わないよ。よろしくフリンク」

これが、俺と俺の主君との出会いだった。

隣国との戦争はようやく終結を見せ、主君も護衛の俺と一緒ならば比較的自由に外出できるようになった。

主君は絶世の美人で、道ゆくだれもが振り返ってあの方を噂した。

主君は性格も良く、他に無いものを沢山持っていた。

そして、俺がそんな主君に淡い恋心を抱くのも時間の問題だった。

気持ちを自覚してからの俺は舞い上がっていた。

いつのまにか同僚が失踪と補充を繰り返しても、何も思わないほどには頭が働いていなかった。

だからだろうか?

俺は主君の全てを知っていると愚かにも思い上がっていた。本質は何もわかっていなかったのに。

「フリンク。オマエはいいやつだったね。
ワタシを怪しまず、私を守った。
でも、私の情が移りそうなんだ。そうなったら、ワタシはどうなる?私の陰にいるのも難しくなってくる。」

「だから、死んでくれ」

目の前にいるのは紛れもなく敬愛し、密かに想いを寄せる主君の姿だ。

ああ、でも俺はコイツを知らない。

いや、知っている。

コイツは、主君の影に棲みついていた...!!


昔のことだ。護衛になる前に、昔主君に仕えていたという男が俺の元へやってきた。

男は言った。

お前が仕えるお方の影は絶対に見るな。
どんなに気配を感じても、詮索してはならず、
その存在をお聞きしてもいけない

何故なら...

あの方の影には奴が棲みついている!

奴はあの方の全てを手に入れないと気が済まない。

寂しさを埋めるのも、自分の役割にしたがる。

だから、その役目が揺らぎそうになった時、奴は
あの方に乗り移り、全ての邪魔を薙ぎ払う。

僕は運が良かった。奴から逃れられた。
いいか、あの方にはなるべく関わるなよ。


その翌日、その男は死体で発見された。


恐怖で体が震える。それでも主君はうつくしかった。

奴は言う。

みのがしてあげようか?

オマエは自らここを去る。

うまくできたら、見逃してやるよ


俺は生きたかった。だから、心の奥底の声を無視することしか出来なかった。
選択肢は一つしかなかった。



窓の外ではほんのり色づき始めたイチョウがゆるく存在感を放っている。あの護衛はもう行っただろうか?
人が怖くてワタシに守られてばかりだった私。
たとえ今お前が苦しんでいたとしても、これがワタシの愛なのだ。

全力で、ワタシなりにお前を守るから、
今はどうかこのままで、側にいさせて


これはひとりの叶わぬ恋をした男と
  愛を知らず享受する娘と
一心に愛を捧げる娘の別人格の
       恋物語


【秋恋】


9/21/2023, 9:16:44 AM

ネコが死んだ。

世話係が自殺したと聞かされた翌日だった。

皆、私と話した数日の間、仕える者なら一ヶ月の間に
忽然と姿を消してしまう。

こっそり拾ったネコでさえこのザマだ。

誰もが怪しんでいるのに決して口外しない。

私には決して教えない。


全てを知っているのはワタシだけなのだから


今日は誰の訃報が入るのか。

それを恐れて閉じこもる私は弱いのだろう。

話し相手を欲しがったらその者が殺される。

かといって遠ざけていたら陰口を叩かれる。

ならば、全てを拒んだ私の選択は間違っていたのだろうか?

ただ、

「大切にしたいだけなのに」

そのとき陰で、笑う声ひとつ



【大切にしたい】


9/19/2023, 11:09:04 AM

『余命宣告を受けた。』

古い友人からのLINEは、唐突に始まった。

そしてそれは、『僕』の終わりを示していたんだ。


20x x年 この世界には四つの能力が存在し、

無差別に世界に選ばれた四人がその能力を受け継ぐ。

ひとつめは友人の時を止める力

ふたつめはAndroidのジークの自然を操る力

みっつめは引きこもりのトニーの感情を読む力

よっつめは不明だ。

別に敵がいるわけでもなく、命尽きるまで保有するだけ

の力を取り合う時代はもう終わった。


そして、時を止める力の次の継承者は『俺』になる。



病室の中は薄暗かった。友人は薄く微笑む。
「まってたよ。死神。」

一つ目は時を止める力
二つ目は自然を操る力
三つ目は感情を読む力
よっつめは全てを奪う力。

たとえ誰かを殺すことになったとしても、
俺は全てを奪う。


—————————————————————————

「なぁ、ジーク。お前知ってるか?
 本来、力は全部で五つあった。

一つ目は時を止める力
二つ目は自然を操る力
三つ目は感情を読む力
四つ目は全てを奪う力

禁忌に包まれた五つ目の力それは

永遠を生きるチカラ

でも全てを手に入れたらどうなるのだろう。
そう考えた奴がいた。永い生を手に入れた末の結論だ。

四人目がまずやられた。全てを奪えても、驕っていい理由にはならなかった。

そして昨日、一人目が死んだ。知り合い全員に余命宣告の連絡を入れた後。

自分の本当の名前は蒼だ。でも奴に目をつけられないために、ニートを文字ったような名前に変えた。

それももう終わりだ。自分は奴が怖かった。

奴から、シーカから感情が読めた事は無い。

なぁジーク。何か言ってくれよ。

もう最後なんだから___


「時間よ、止まれ」



【時間よ止まれ】



昔々、死神という名の少年がいました。
死神はヒトの魂を狩る仕事をしていましたが、
ある日他の神様から四つのチカラを奪いました。
そして四つを大地にばら撒き、力を持ったヒトを生み出しました。死神はシーカと名乗り、同じく永遠の力を持つモノとして人に紛れ込みました。
三つ目の力の継承者には警戒されていましたが、死神は
それでも人の世を楽しみました。
楽しんで、楽しみつくして、胸を占める好奇心を無視できなくなりました。
全てのチカラを手に入れた死神は、かつて暮らしていた天に戻りました。しかしどんな天上の調べも美酒も死神の心を満たしはしません。
かつて暮らした天を楽しみ、人の世を楽しみ、満足しきっていた死神は、悪魔の棲む地獄に目をつけました。
そうして堕天した死神は漆黒の翼を得ました、
これが、死神が恐れられ、敬われる理由なのだ。

9/18/2023, 11:11:35 AM

ひとつめの扉は天国へ
ふたつめの扉は地獄の恋人のもとへ
みっつめのドアは君の生きるべき世界に戻れるよ


うつくしい人だった。
私が霞んでしまうくらいに。
容姿もさながら、
その心は赤子の様に純真で、清らかだった。
彼の前では妬みなど何処かへ行ってしまった。

そんな彼が、死んだ。

地獄の悪魔が、拐かしていったらしい

わたしを止めるモノは、無くなった。


勢いできたこの世界は、光に包まれて酷く美しかった。

それでも此処は天国ではないという。

自称案内人は、ひどい三つの選択肢を突きつけてくる。

やっぱり天国ではないのかもしれない。


天国へ行くには何も得ていなさすぎる。まだ早い。


では、地獄へ行けるのか?

勿論と言いかけて、ふと心を占める感情に気づく。

ワタシはずっと、彼が、兄が憎かった。

片割れのくせして、全てを奪っていった兄。

優しい心も絶世の容姿も、少しくらいくれてもよかったのに。


気づいたら、三つ目のドアに向かって足が動いていた。

二つ目に行こうと思うのに、足が痺れて動かなくなる。

珍しいブリキのドアノブを捻る感触が、妙に手に残った


—————————————————————————

「ちょっと!何処いってたの!?」

「あ...」

気づいた時、私はマンションの前に突っ立っていた。

瞳からは涙が溢れているのに、直前のことがどうも思いだせなかった。

でも、これだけは聞いておかないと。

「あのさ、私って一人っ子だよね。」

当たり前との返答を得て、何故か酷く安堵した。

歩きだした私に、夜景の光がしみる。

(この中に、彼もいたのかな。)

もう思い出せないけれど



【夜景】

9/17/2023, 10:36:14 AM

「君には一生手折れないくらいの物を、
誕生日に贈ってあげる」

そう言って例の小間使いが姿を消したのが6日前。
誕生日まであと6日。

屋敷のメイドが駆け落ちして、姿をくらませたのが3日前
誕生日まであと3日。

誕生日プレゼントを売りに来るはずの商人が来なかったのが昨日のこと。
期限はもう、明日まで。

早朝、カナリアが鳴き出す前に彼は窓から戻ってきた。

そしてみたのは...

大きな大きな花畑。

幾ら摘んでもなくならないほどの花。

ああ、なんて幸せなんでしょう。

「これで一緒にいられるね。」

ずっと想っていた小間使いは、心底嬉しそうに笑った。


___________________________________________________

昔々、あるお屋敷に美しい少女が住んでいました。

その少女に会いに、沢山の人が屋敷を訪れましたが、
帰ってきた人はごく僅か。

その人々は口を揃えて言います。

「あの屋敷は、悪魔が棲みついている」

うつくしい少女は人の心を折るのが大好きで、そばに控える婚約者はそんな少女の性格を作った張本人。

ずっと自分だけをみて欲しいから、人が寄り付かない性格をつくり、愛でているのだとか。

屋敷には婚約者に恋慕し、少女を殺そうとしたカナリアというメイドが、毎朝拷問を受けているのだとか。

でも一番怖いのは、大きな大きな花畑が、庭につくられていることなのです。

婚約者の心を折らないためにつくられた花畑は、かって痩せ細っていた土地につくられました。

そしてその直前、多くの人が姿を消しました。

ああ、もうこの話はやめにしましょう。

少女と悪魔は、それでも幸せに暮らしているのですから


【花畑】

Next