特別な夜
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「 …今夜は流星群が見られるんだそうだ」
不器用な誘い文句にただ苦笑いして、知っているよと頷いてやる。
だって朝一緒に聞いていたじゃないか。
案の定、困った顔で固まってしまったアイツ。
ちょっと誘い方がお粗末なんじゃないかな?
仕方がないから少しだけ助け舟を出してやろう。
「俺は遅くまで仕事なんだ…」
起きていられるの? いつも早寝早起きのお前が。
俺が誘ってもちっとも起きていられないじゃないか。
閉ざされた日記
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彼を失った。
みなを明るく照らす太陽のようなヤツだった。
亡骸はなにも残らなかった。
ただひとつ、部屋の片隅に隠すように置かれた一冊の日記帳。
鍵も、なにもかかっていないただのノート。
指でつつけばすぐに中身を覗けるであろう、そのノート。
けれど俺には、未だ中身を見る勇気がない。
ノートの表紙を指の腹で撫で、ひとつ息を吐く。
「 あいつが、なにを思っていたかなんて 」
恨み言であればいい、けれど愛されていたなんて知ってしまったら、きっと俺は耐えられない。
そして、今日も俺はその閉ざされた日記を指の腹で撫でるのだ。
木枯らし
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中庭の木の葉が舞い踊る。
木枯らし1号だ。と、誰かが言った。
「 寒い… 」
冬のような色をしたその人は、
寒そうに鼻も耳も真っ赤に染めて首を竦めた。
「 …なにかな 」
じっと見られていることに気づいた彼は、不機嫌そうに眉を寄せて…けれど赤く染まった鼻の頭が可愛らしくてつい口元が緩んでしまった。
美しい
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美しい人だ、と思った。
夜空に浮かぶ星の如く輝く銀の糸が、
身動ぎをする度にふわりと揺らめいて目を奪う。
美しい人だ、と思った。
眼窩におさまる瑠璃色の宝石が瞬くたびに煌めいて、
こぼれ落ちるのではないかと心配になる。
美しい人だ。
苛烈な性格も、矜持の高いその心根も。
惚けて見つめていると、彼が振り返って笑う。
「お前も同じ顔だろう」
恋は人を盲目にする。