この場所で
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いつまで待つの、と聞かれた。
きっと捨てられたんだろう、もう帰ってこないかもしれない、どこか違うところで良い人でもできたのでは…?
そんな心無い言葉も多く浴びせられた。
「 必ず戻る 」
そう、あいつが言ったから。
俺は幾千幾万過ぎようともここで、この場所で、お前を待ってる。
溢れる気持ち
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夏風に吹かれる黄金色の髪。
地平線まで広がる海原のような翡翠の瞳。
気難しそうな顔をしながら、俺を見ると緩く微笑むその口元。
「 なにを笑っているんだ 」
不機嫌そうに低くなるその声も。
愛しい、と。
そう思う気持ちが湯水のように溢れてやまないのは
お前が俺の唯一だからだろうか。
「 なんでもないよ 」
俺がこんなにお前を愛していることを、お前は知らないだろう。
旅路の果てに
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永い、永い時を過ごした。
雨の日も、風の日も、嵐の夜も…
春夏秋冬(ひととせ)過ぎ、また、永い時を過ごし君を想う。
ああどうか、息災で。
旅路の果てに俺がいることを、忘れないで。
特別な夜
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「 …今夜は流星群が見られるんだそうだ」
不器用な誘い文句にただ苦笑いして、知っているよと頷いてやる。
だって朝一緒に聞いていたじゃないか。
案の定、困った顔で固まってしまったアイツ。
ちょっと誘い方がお粗末なんじゃないかな?
仕方がないから少しだけ助け舟を出してやろう。
「俺は遅くまで仕事なんだ…」
起きていられるの? いつも早寝早起きのお前が。
俺が誘ってもちっとも起きていられないじゃないか。
閉ざされた日記
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彼を失った。
みなを明るく照らす太陽のようなヤツだった。
亡骸はなにも残らなかった。
ただひとつ、部屋の片隅に隠すように置かれた一冊の日記帳。
鍵も、なにもかかっていないただのノート。
指でつつけばすぐに中身を覗けるであろう、そのノート。
けれど俺には、未だ中身を見る勇気がない。
ノートの表紙を指の腹で撫で、ひとつ息を吐く。
「 あいつが、なにを思っていたかなんて 」
恨み言であればいい、けれど愛されていたなんて知ってしまったら、きっと俺は耐えられない。
そして、今日も俺はその閉ざされた日記を指の腹で撫でるのだ。