後一歩が届かなかった。後一歩、後一声かけれていたら君の好きな人は私だったのかな。
もしあの時、あの場所にいたのが私だったら 。
それでも、今日も知らん顔であなたと隣にいるあの子に笑顔でさようなら。
やりやまないライン、ほとんどが公式か友人で
一番欲しい連絡は来ないまま。
やっときた君からの一件の連絡が嬉しくてむず痒くて
頬が緩んでしまうの。
長く考えて返したラインを送ってふと思う。
この一件に込められた好きって気持ちが君と同じだといいなって
「右向け右。」
そう言われて私は、周りに合わせて右を向く。
「進学しなさい。」
そう言われて私は、両親の期待と友達の希望に応えるように進学した。
「大手企業に就職しなさい。」
そう言われて私は。
私は、落ちた。
私にとっての当たり前は、最も簡単に崩れ去った。
一気に崩れていく私という存在。
私は一体何者で、何のために生きて、なにに生きがいを見出しているのか。
当たり前に過ごしていた日々が霞んで見えなくなっていく。
答えはきっとない。それでも私は問いてこれからも生きていくんだ。
私は誰で、何で生きようとしているのか。
そして、“普通“と“当たり前“の間で今日も息をする。
君と付き合った次の月がちょうど七夕の季節だった。
短冊に君がずっと僕のそばに居れますように。って書くもんだからつられて笑顔が溢れる。
2年、3年と歳をとっていく僕ら。
彦星もこんな気持ちだったのだろうか?
君と少しでも離れているだけで、切なさで胸が張り裂けそうになる。
だからこそ付き合って5年目の七夕の夜に、心に決めたのさ。
君と訪れたデパートの片隅にひっそり立っている七夕コーナーの前で未来図を書こう。
天の川なんて僕らは、織姫と彦星じゃないからそんなの必要ない。
君の薬指で輝く二人を結ぶシルバーの婚約指輪は天の川よりも輝いて見える。
涙ぐむ君は幸せそうに指輪を見つめると、短冊に触れた。
夢なら覚めて欲しかった、それでもこの別れは僕らに必要不可欠なものだったんだ。
「愛してるよ。」
僕の声は震えていて、もう今ではこの言葉に絡まれた決意も揺らいでいるんだ。
それでも愛していたのには変わりなくて、夜空の星を眺めては自分が器が小さいだけではないかとも考えた。
ただ、長年連れ添ってきた僕の友人の横で楽しそうに笑う君を見てしまったら気づいたんだ。
楽しそうに笑い合う君と僕の親友。
それを眺めてただ情けなく泣くだけの僕。
どっちの方が君を幸せにできるか明確だった、それを改めて感じてしまった。
僕という人間は君の横に立つには、あまりに単純で幼すぎたみたいだ。
まだ、君が僕の隣にいてくれると期待している自分を明日に先送りにして携帯に手を伸ばす。
充電していたせいか、とても熱く感じる。
覚悟を決めて別れを告げるには、あまりに簡単すぎて愛を伝えるよりも別れの方が気楽で軽く感じた。
君からの返信を待つことなく、流れ作業のようにブロックして目を閉じる。
瞼に浮かぶ光景に嗚咽が自然と出てしまっていた。
夜空に浮かび毎夜光る星と月はあまりにも眩しすぎる、きっと涙はそのせいだ。