物語の始まり
振り返ると、それは、始まりだった…
あの雨の日、雨宿りしていたら、あなたが隣に駆け込んで来た…突然の雨で、近くにコンビニも無くて、バス停の小さな屋根の下に飛び込んだ…程なく、あなたもやって来て…
濡れて、下着が透けていたあなたに、周章てて上着を差し出した…あなたは一瞬戸惑う様子で、自分の姿を確認して、躊躇いながら、羽織ってくれて…ちょっと挨拶交わして、雨が止むと、そのまま帰ろうとした…ただの、何処にでもある一コマで、それで終わりだと、思っていた…
でも、そこから、あなたとのやりとりがあり、いつの間にか、恋人と言う関係になった…見ず知らずの出逢いが、こんなふうになるなんて…
ただの雨宿り…そこから始まった、予想外の展開に、今更乍ら…
静かな情熱
あなたを見ると、心がざわつく…何時も、感情が読めないと言われるのに、あなたの気配を感じると、もう落ち着いていられない… あなたの仕草や、無意識に耳に触る癖、気長なのにせっかちな足音…
無関心を装い乍ら、何時も気にしている、あなたの全てに…でも、誰にも知られたくない自分だけの秘密…あなたに知って欲しくて、でも知られるのが怖くて…クールな装いで、何時でもあなただけ、想っている…
遠くの声
誰かが呼んでる、わたしの名前…でもその声には聞き覚えが無くて…それなのに凄く愛おしい声色…
何処から聞こえてくるのか見渡してもわからない…
でも、優しくて、ぎゅっと心を包んでくれるから…その声のひとに、会いたい…心の中の何かが、その遠い声に惹かれているから…
春恋
春になると、何となく新しい出逢いがあるような気がする…毎年、そう稀い乍、桜の並木に通っていた…
でも、そんな奇跡には関わる事なく、今年も春を迎えた…薄紅色の花びらが、ちらほら出始めて、やがて春の景色を凌駕し始めたのに、矢張り特別な出逢いもなく、寂寥に浸り始めた…
やがて、春風にさくらが散り始めて、諦め掛けた時、あなたに出逢えた…桜の花びらが舞い落ちるこの道で、長い黒髪を靡かせるあなたに、ひと目で恋した…
艷やかな黒髪と薄紅色の春の舞、桜のトンネルから覗く、柔らかな陽射しの青空…
物憂げで儚い瞳のあなたを見つけた時、運命だと直感して…あなたに、この淡く儚い想いを、この桜並木から桜花がなくなる前に、伝えたい…
未来図
未来なんて、あるんだろうか…幼い頃は、色々な未来を思い描いていたのに、何時からかそんな事もなくなり…
其れが、あなたと出逢えてから、あなたとの未来を、想う様になった…初めて感じる、この気持ちを、ずっと先まで、続いて欲しいって稀う…欲張りだって、儚い夢だって分かっているけれど…
あなたとの未来図、きっと叶えたい…