静かな夜明け
冬の夜明けは、痛い程に寒くて、怖い程に静かな空気に包まれている…
夏ならば、早朝から小鳥の囀りや、行き交う足音…そんな色々な音が、何処からとも無く、浅い眠りを蝕んでくる…
其れが、冬になると、張り詰めた空気が、冷たく身体に纏わりついて、瞼が開けられないでいる…夜の帳も、何処迄も侵食して、夜明けを阻んでいる…
なかなか明けない、彼方の空、今暫く、静かに待つばかり…
Heart to Heart
夕焼けを見ていたら、不図、少女を想ってみた…
遠い昔、国語の時間に習った、吉野弘の「夕焼け」と言う詩…電車での、ありふれた日常の風景で、少女が、年配者に席を譲る…そんな内容で…
美しい夕焼けと、俯く少女の感じが、迚も好きな作品で、夕焼けを見ると、その一節が、目の前に浮かんでくる…その少女を想像する度に、彼女の揺れる気持ちが、ぐっと迫ってくる…
あの少女は、今でも、電車で…
永遠の花束
永遠の誓いを花束で…
なんて、そんな事を考え乍ら、あなたを想っている…あなたと出逢って、2度目の冬…
あの夜、ちょっと嫌な事があって、公園のベンチで座っていたら、心配そうな面持ちで、声を掛けてくれたね…初対面なのに、色々話しを聞いてくれて、励ましてくれたね…
其れから、時々会って、友達になって…そのうち、いつの間にか、好きになっていて…
あの、モノクロの世界から、私を救ってくれたあなたと、ずっとこれからも、一緒にいたい…その気持ちを、花束に込めて…
やさしくしないで
最近、あなたに、優しくされるのが、段々辛くなってきたよ…
あなたの優しさ…私だけだと思っていたけれど…あなたは、皆んなに同じように優しくて、あなたにとって、私はただのその他大勢の一人で…
あなたの優しさを、独占したい…あなたの特別な存在になりたい…日毎に、募る想いが充るのと裏腹に、あなたの優しさが、私の心を壊してゆく…
だから…優しくして欲しいのに、その優しさが辛い…
隠された手紙
高校生の頃、高校生向きの雑誌が縁で、遠方の高校生と文通をしていた…
男子校に通っていた私には、女子とは、唯一の交流で、毎回の便りが何よりの楽しみだった…しかも、九州と関東で、行事や、日常の些細な事でも、新鮮で…3年間続いて、受験を期に終わったけれど、交わした手紙は、大切な宝物…