はなればなれ
もう、何十年経つだろう…あの頃は、毎日、あの古ぼけた図書室に、集まって、楽しくやっていたな…後輩も、いつの間にか増えて、少しづつ賑やかになっていて…
図書委員だけの集まりが、いつの間にか、その連れやその更に友達まで来るようになり、うるさくて、何度も先生に注意された…
受験生だった私は、この一時が、一番の幸せの時間で、家族よりも、大事な仲間だった…
でも、卒業と共に、段々と疎遠になって、今は、連絡手段も、それぞれの今も判らない…
それなのに、今でも、あの頃のあの仲間達が、心の支えになっている…
子猫
まるで、子猫の様に、戯れてくるきみ…もう、小学生の頃みたいに、手を繋いだり、ハグしたりするのは、一寸恥ずかしい…
けれど、きみは、あの頃と変わらず、抱きついたり、腕を組んだり…その度に、僕は、ドキドキしている…同じ様だった体型も、いつの間にか、女の子らしく丸みを帯びて柔らかくて、思っているより小さくて柔らかい掌、コロコロ変わる表情が眩しい…
そして、きみに、恋してる僕は…
秋風
色付き始めた木々を優しく揺らす秋風…少し冷たくて、何処か物悲しい…
春風に舞う、桜の花びらの華やかさや、艶やかさは無くて、色とりどりで美しい景色なのに、落ち葉の舞う姿は、物悲しい気持だけが浮かんでくる…
この、秋風が吹くと、屹度君の俤が浮かんでくる…寂し気な瞳の君は、夏の終わりに現れて、秋風と共に、ふっと消えてしまったね…何時も、儚げな眼差しが、何時までも、忘れられなくて…
また会いましょう
3月の頭の卒業式…陽射しはあるけれど、まだまだ寒さが続く…
卒業式が終わって、校庭をぼんやり眺めていたら、同じクラスの女子に、声を掛けられた…式の間、泣いていた彼女の瞳は、赤く縁取られていた…ひとしきり、思い出話をして、これで、会えなくなるね…って話しをした時、彼女は、
また、此処で会いましょう
そう、小さな声で、呟いた…
あれから、地元の会社に就職して、彼女は、都会の大学に進学して…
まだ、携帯電話とか無かった時代、何の交流も無く、一度も会わず仕舞い…
何となく交わした、あの日の約束…忙しい日々に、飲み込まれ乍ら、心の片隅で、何となく燻っていた…
そして、来年の3月、約束したあの日が巡ってくる…遠く、淡い約束を、何となく期待し乍ら、一人暮らしの部屋で、あの日の彼女を不図、思い出している…
スリル
毎日が、綱渡りの生活…ギリギリのラインで、生きている…子供の頃、ハラハラドキドキな暮らしをしている大人になりたい…そう願っていたのが、ある意味、叶ったのかも知れない…
この生活は、でも、決して好ましいとは言えない…出来るなら、ハラハラもドキドキもない、単調な生活を送りたい…