秋風
色付き始めた木々を優しく揺らす秋風…少し冷たくて、何処か物悲しい…
春風に舞う、桜の花びらの華やかさや、艶やかさは無くて、色とりどりで美しい景色なのに、落ち葉の舞う姿は、物悲しい気持だけが浮かんでくる…
この、秋風が吹くと、屹度君の俤が浮かんでくる…寂し気な瞳の君は、夏の終わりに現れて、秋風と共に、ふっと消えてしまったね…何時も、儚げな眼差しが、何時までも、忘れられなくて…
また会いましょう
3月の頭の卒業式…陽射しはあるけれど、まだまだ寒さが続く…
卒業式が終わって、校庭をぼんやり眺めていたら、同じクラスの女子に、声を掛けられた…式の間、泣いていた彼女の瞳は、赤く縁取られていた…ひとしきり、思い出話をして、これで、会えなくなるね…って話しをした時、彼女は、
また、此処で会いましょう
そう、小さな声で、呟いた…
あれから、地元の会社に就職して、彼女は、都会の大学に進学して…
まだ、携帯電話とか無かった時代、何の交流も無く、一度も会わず仕舞い…
何となく交わした、あの日の約束…忙しい日々に、飲み込まれ乍ら、心の片隅で、何となく燻っていた…
そして、来年の3月、約束したあの日が巡ってくる…遠く、淡い約束を、何となく期待し乍ら、一人暮らしの部屋で、あの日の彼女を不図、思い出している…
スリル
毎日が、綱渡りの生活…ギリギリのラインで、生きている…子供の頃、ハラハラドキドキな暮らしをしている大人になりたい…そう願っていたのが、ある意味、叶ったのかも知れない…
この生活は、でも、決して好ましいとは言えない…出来るなら、ハラハラもドキドキもない、単調な生活を送りたい…
飛べない翼
天使の様な、白い翼が欲しい…真っ白で、何処迄も、飛んで行ける、自由に時間をも超えてみたい…
純白な翼が欲しい…神様、私の背中に、授けて下さい…そう、心の中で、呟いてみるけれど…
ずっと、希っているのに、叶わない、儚い妄想巡り…翼があれば…
今日も、一人ぼっちの小さなベンチで、青空を見上げ乍ら…
ススキ
白い穂が、夕陽に照らされて、夕風に凪ぐ姿が、切なくて、美しい…真っ白な薄の穂は、まるで、影絵の様に、仄暗い世界と、茜色に反射して、輝いている…
この、夕暮れの淋しくて美しい景色には、屹度、あなたが似合っていると思う…夕焼けに照らされるあなたが、その、長い髪を靡かせる様は、誰よりも、美しいから…