お祭り
7月になると、六月灯を思い出す…ただ、お宮参りするだけのお祭り…
踊りだの、山車だのは無くて、鳥居周辺の夜店を冷やかす簡素な夜祭り…せいぜい、行燈に絵を描いて、参道沿いに這わせた荒縄に、吊るして奉納するくらいで…
金魚掬いや、綿あめ、ひよこ釣り…何かし乍ら、夏の夜を過ごした…仲良しの女の子の浴衣姿に、ドキドキして、握りしめた百円玉が汗でしっとりしていた…
そんな、微かな遠い記憶がごちゃまぜになって、切なく甘い想いがこみ上げてくる…
神様が舞い降りて来て、こう言った。
ちょっとした山道を歩いている…木立ちの中の小径で木々の間から、青空が覗いて、木漏れ陽が眩しい…
でも、不思議と、暑くも無く、野鳥の鳴き声も聞こえない…ただ、よく判らない儘、緩い山道をゆっくり登って…
どのくらい歩いただろうか…不意に視界が拡がり、下り坂の向こうの丘の上に、大きな木が見えた…周りの木々は、風にそよいでいるのに、其木は、微クリともしないで立っていた…そして、視線が、その巨木にあった時…
誰かのためになるならば
私が居なくなれば…あの人が、幸せになるのならば…そう思う日々…でも…本当は、ずっと側にいたい…あの人の為に、色々してあげたい…
だけど、あの人が、私の為に、大変な思いしていることを知っているから…優しいあの人は、無理しているのを、そっと隠している…だから、早くあの人のもとから、居なくなればならないけれど…
でも…でも…離れたくはない…
鳥かご
何となく過ごす毎日が、何となく息苦しく感じる…
子供の頃描いていた未来は、毎日が楽しくて、充実している…筈だった…
けれど、段々年を重ねるうちに、決まったルーティンから抜けられないと、判ってきた…何となく守られているけど、見えない壁から抜け出せない…
自由な様でいて、色々なしがらみから、逃れられない…でも、一方で、居心地の良さもある…何となく生きている、此の何とも言えない感じが、まるで鳥かごの中の、踏み出せない鳥の様で…
友情
今日から、友達だね…
そんな始まりでは無いけれど、友達の友達みたいな感じで、よそよそしいスタートだったよね…人見知りの激しい私は、なかなか溶け込めなくて、何時も、皆んなの後ろから、黙って、愛想笑いしているだけ…そんな私に、少しづつ語りかけてくれたね…本当は、嬉しくて、ありがとうって、伝えたいのに、上手く喋れなくて、小さく頷くだけで…それが、いつの間にか、誰よりも仲良しになれたね…そして、まだ言えないけれど、友達以上の気持ちが、芽生えて来てるよ…