我楽多、数多、記憶の花道
人工の星が照らすブリキの街
空はとっくに落ちたけれど
いつでも明るい我らが故郷さ
錆びたあの子は今日も歌う
遠い昔の歌姫のように
掠れた声で、情熱を誦じる
胸のポンプは冷たいけれど
雄叫び、喝采、雨のように
鉄の皮も羽衣となる
彼らは間違えた
繰り返し、何度も、何度も
彼らに愛された
初めて見た二つの光を忘れない
街外れの暗闇、汚濁の水鏡
調子外れの音階は
無機質の宙、彼方へと走り去る
ワタシは天国にも地獄にも行けないけれど
祈るように、パイプを鳴らすの
(ラララ)
心は知らない、聞こえない
振動を届ける筒がない
けれど花火のように、泡のように浮かび上がって
船より早く、飛行機より遠くまで
小さな私を届けてくれる
知っているかしら
楽園は歪な形をしている
小さな私は傷付いて
泣いて哭いて腫らして弾け
膿んだ希望を引き連れて
轟々と唸る赤い川を辿り、芯に至る
やがて凍り付く、その前に
きっと夢見たことでしょう
天の川、あるいは一面の向日葵畑
それら全てが私であなた
お休みなさい、良い夢を
私が咲き、咲かせましょう
あなたは私
私はあなた
希望の種子を抱いて飛んで
世界全て、染め上げて仕舞うまで
(風が運ぶもの)
問い掛ける
時はなく、救いもない
静謐だけが横たわる、忘れられた片隅で
やがて辿り着くセピアの回廊
枯れた木々は罅のように
脳溝をなぞり、蝕み、腐らせていく
いつから此処に
何故、私は
いつまで惚けるのか
分からない、分からない、分からない
閉じ籠る
望まれない選択を否定しないで
放っておいてくれないか
窓越しの鳥のように、私は相容れないモノ
蓋をして、鍵を掛けて、塗り潰して
お願いだから、ねえ、私を見ないで
問い掛けて
塞いだ手に重ねる熱を、微笑みを
許してはならない
迎えてはいけない
待ってなどいない
本当だから、どうか、どうか、揺り起こさないで
(question)
星屑を眺め、穏やかに笑った
影も迷いも受け入れた、力強い横顔を覚えている
流星の一矢、鋭い眼光
その優しさが一度、取り零したモノを知っている
凪いだ声、透き通る瞳
白い指先がなぞる円
滑る爪先、やがてその熱が至るこの黒
並ぶ肩の温もりを、珍しく紡がれた御伽噺を
珠玉の誓いを
お前が忘れてしまっても
そう、この胸に空洞も赤も無いけれど
またお前と逢う為に、宝を全て落としたのだから
いつか旅立ってしまうまで
花弁の隙間から見つめていよう
貫く青を星空に探す
伸ばした手を取る、白があるとは
(約束)
窓際の花は語らない
紅茶を淹れたら一頁、捲る
巡る空想と午下り
吊られたエアプランツは噂話
訪う雀と気紛れに
鴉が鳴いたらお別れね
遊ぶ光は石が好き
藍が来るまで、散る儘に
離さない、逃さない
夜が明けたらまた会える
雨上がりのトンネル
地上の空
あんなにも青かったけれど
固められた笑顔は滲むだけ
(ひらり)