小音葉

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3/4/2025, 1:58:30 PM

星屑を眺め、穏やかに笑った
影も迷いも受け入れた、力強い横顔を覚えている
流星の一矢、鋭い眼光
その優しさが一度、取り零したモノを知っている

凪いだ声、透き通る瞳
白い指先がなぞる円
滑る爪先、やがてその熱が至るこの黒
並ぶ肩の温もりを、珍しく紡がれた御伽噺を
珠玉の誓いを

お前が忘れてしまっても

そう、この胸に空洞も赤も無いけれど
またお前と逢う為に、宝を全て落としたのだから
いつか旅立ってしまうまで
花弁の隙間から見つめていよう

貫く青を星空に探す
伸ばした手を取る、白があるとは

(約束)

3/3/2025, 1:47:02 PM

窓際の花は語らない
紅茶を淹れたら一頁、捲る
巡る空想と午下り

吊られたエアプランツは噂話
訪う雀と気紛れに
鴉が鳴いたらお別れね

遊ぶ光は石が好き
藍が来るまで、散る儘に
離さない、逃さない
夜が明けたらまた会える

雨上がりのトンネル
地上の空
あんなにも青かったけれど
固められた笑顔は滲むだけ

(ひらり)

3/2/2025, 12:12:33 PM



銀の頂、白亜の塔
忘れ去られた過去の檻
ある日は、止まった針を見つめて
またある日は、小さな物語を棚に収めて
価値なき証を綴る亡霊

鼓動は鳴らず
吐き出す色は透き通る
確かめる足もなく
空洞を抱えて目を擦る
呼び声は久しく聞こえない

これが罰ならば
贖うべき罪の形ならば
しかし、天秤を揺らす手はどこから訪う
眠れない
これでは、込み上げる
まだ、まだ、永遠になりたくない
色付く、広がる、かつてあなたがくれたもの

ああ、あなたは、そう、あなただけを
待っていた

(誰かしら?)

3/1/2025, 12:05:50 PM

昏き底から這いずり穿つ
さあ、さあ、目覚める時が来た
おはよう、朝焼けの城郭、花舞う岬
おはよう、朽ちた花より醜い世界
薄闇に灯せ、燃えろよ炎

そこに根を張り眠っていた頃
天を叩く脚に起こされて
睨んだはずの瞳はたちまち奪われた
忘れもしない
嫋やかな乙女
風と踊る名も知らぬ花
馬骨に手折られるならば隠したのに

残骸は腹の底
地を穿ち、風を裂き、城壁に喰らい付く
這ってでも転ばせて見せよう
いつか花を踏み躙った、乾いた枯れ木
報いならば今燃え上がる
さあ、さあ、銀葉の毒を燃料に
宙の星より苛烈に燃やせ

復讐の時、来たれり

(芽吹きのとき)

2/28/2025, 10:26:59 AM

あなたの肌のような白い布は
私たちを隠して
千夜一夜、二人だけの小さな城へ
けれど風に煽られ、透けて、翻り
いつかあなたを連れて行ってしまった

微かに香る白檀
雲によく似たシーツの中、溺れて
きらり、片耳に揺れる太陽が去ったこと
気付かなかったのは誰のせい?

あの頃からまるで全てが夢のよう
愛も王冠も要らないのに
あなただけが見つからない
寒くて、眠くて、冷たくて
あなたに届けと伸ばした手は雲間を泳いで落ちていく

癖のあるこの髪を掬って、片指で遊んでいたあなた
くるり、くるり
シルクのひとときは遠き春
桜色の唇は、空の瞳は、何を紡いでいたのか

あなたの熱を忘れたくない
まだ、あなたの炎を覚えていたい

(あの日の温もり)

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