青花一華

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5/6/2023, 2:16:32 PM

どうか、夏が来ませんように

4/7/2023, 10:01:48 PM

#沈む夕日

あの日、わたしはこの場所で地球最後の夕焼けを見た。

あの瞬間、わたしの世界は一斉に息を止めたのだ。
ただただ色濃く広がっていく茜色が、悠々と燃え広がっていくようなキャンバス。それを映す鏡は、まるでわたしをそちらの世界に連れて行ってくれるように思えた。
海と空の境界線がはっきりと浮かび上がる。
光の核が、ゆっくりゆっくりと落ちていく。あれは、きっと海に帰っていくのだろう。太陽にだって帰る場所があってもいいはずだ。太陽だって、わたし達人間と同じように生きている。当たり前に朝には顔を出し、夜には姿を隠す。そのサイクルを絶やすことなく、太陽はわたしたちの住む星を照らすという仕事を淡々とこなしている。休みなどなく、ただひたすらに。出勤と帰宅を繰り返す。
なんだ。あれだって、人間と同じようなものではないか、と思った。
だから今わたしは、この地球で1番美しい、太陽の退勤の様を眺めていられるのだろう。


赤く色づいた空は、段々と青に覆われてきた。

力強い希望の光が、濃紺に吸い込まれていく。


ついに、ついに終わるのだ。この世界がようやく。
長かった。長い長い人生だった。同時に長い戦いでもあった。出会うべくして出会った人は、とうに先立たれてしまったし。今をここまで生きてきて、希望を見出すことなど二度となかった。
死ねないから、生きている。ただ、ただ純粋に、
それだけで生きていた。


傲慢だ、と人は言うのかもしれない。
与えられた生命、身体を大切に、天寿まで全うすべきだと。なすべき今世の己の使命を探し出せと。
生きたくても生きられない、そんな命が数えられないほど存在しているのだ、この星には。
見えない地球の裏側で、いま、何が起きている?
わたし以外の、わたしが見たことすらない人間たちの目には、この世界がどんな風に写っているのだろうか。
そんなの知る術もない。それこそ、傲慢だ。全ての人間の世界の見方を知ろうだなんて。わたしには、なんだって、どうしたって、わたし以外の人間にはなにもしてやることが出来ない。それは逆も然り。

わたしの人生はわたしが決める。
たとえ、それが間違いだと、だれに言われたとしても。構わないのだ、わたしにとって。わたしには、この世界があまりに残酷で、痛くて、苦くて、時々温かい。わたしは、そんな世界に酷く疲れてしまったようなのだ。そう、それだけだ。
だから、もう悔いなど未練など、来世に持ちこす以外に解決策はないのだろう。と。そうわたしは判断した。


嗚呼。

海と空が再びつながる

ただただ最後の沈む夕日に、最後まで目を奪われていた。

4/6/2023, 2:45:10 PM

#君の目を見つめると


青だった。
ただただ一面に広がる、豊かな広い海のような。美しいという陳腐な言葉だけでは、到底言い表せない。
今まで見たことのないような、透明な青だった。


新学期。新生活。入学初日に斜め右前となりの席に座ったその人は、ひどく魅力的に感じる青年だった。
理由など、言いようもない。
黒髪、黒目、中肉中背。いたって普通なようすで、
前の席の男子生徒と会話をしている。でも。やはりその人は何か他の生徒とは違う。しかし、その何かが分からない。何だろうか…。匂い?は特に、柔軟剤って感じだし。顔?は整ってはいるけれど、別に自分の好みってわけでもないし。声だって、低すぎず高すぎず、特段目立っていることは無い。身長だって、制服だって、上履きだって、なんだってその人を一身に見つめ続け、ひたすらに観察をした。気持ち悪いことこの上ない。だがしかし、これは大事なことなのだ。自分にとってはとても。
これこそ「運命」なのではないか、と若干感じてしまっている。俗に言う「ひとめぼれ」ってやつだ。でも、何にひかれているのか分からない恋だなんて嫌すぎる。
絶対、絶対突き止めてみせる…!そう意気込んでいた矢先、その人は私の方へと振り返った。

「ねえ、鑑さん?だっけ、さっき言おうと思ってたんだけど…もしかして俺とどこかで会ったことある??」
「…えっ」
「なんか、知り合いだったかな?って。俺、なんかわかんないけど鑑さんのこと知ってる気がする。…あれ?なんか怖いな俺?!笑」

青だ。濃く、澄んだ、透明な青だった。彼は、唯一無二の美しい青を持っていた。そして、私はこの青を知っている。純粋無垢で誠実なこの瞳は、ひどく遠いむかしの記憶を呼び覚ます。ああ。これは、「ひとめぼれ」なんかじゃない。

運命の人と再びめぐり逢えた、恋の「始まり」だ。

4/2/2023, 3:22:12 PM

当たり前に存在するもの、と問われてキミは何を想像する?
酷く抽象的で曖昧なこの定義に、私はこう答える。
「愛」
愛こそが、そうあるべきだと。私は、そう考えている。


家族から無償の愛を施されて、ただただ無条件にそれを享受する日々。それが当たり前。だから、そう過ごしてきた私はもちろん素直で真っ直ぐな子に育ち、
愛を知り、愛を与える人間になるはずだった。

けれども、どこか他人と違う―――欠陥人間―――だと知ったのはいつだったか。キミにはきっと出会ってない。ずっと、でも遠くはない昔に、私は。
自分が、気づいてしまった。家族やキミ、ましてや世界中の人間と違う価値観を持ってることに。
遅すぎるくらいに、それをようやく感じとった。
それは本当にシンプルなことで。当たり前の環境で何不自由なく育てられた人間が抱くはずがない考えだった。

「愛」がわからない。「愛」ってなに?もっと簡単に言えば、「好き」と「愛」の違いがわからない。

周囲の人間が、当たり前のように誰かに「愛」を抱き、与え合う様子を見ている中で私だけ違った。
同じ「愛」を誰かに注ぐことが、自分だけ出来なかった。私の中で好きと嫌いは当然のように存在するのに、他人と打ち解け合うために必然な「愛」がわからない。

キミは「愛」を感じて、「愛」を与えたことはある?
「愛」ってきっとタカラモノのような物なんだろうね。私はそう、信じてる。だって、たくさんの人に愛されてここまで生きてこられたはずだもの。「愛」を与えられて、上手くそれを受け取れない私が、おかしいの。
誰かに与えることすらできない私が、ぜんぶ、ぜんぶぜんぶ悪いだけ。

、…?キミは、私にとって「好き」な存在だよ?もちろん。だってこんな欠陥人間の話を最後まで聞こうとしてくれるんだもの。なんて優しい世界なんだろうね。私は幸せ者だよ。たぶん。ありがとう。
本当に嬉しい。口だけじゃないよ、私はちゃんと素直で正直な子に育ったからね。
分かってもらえなくても聞いてもらえるだけで嬉しいんだ。
なんかね、心がちょっと温かくなるような気がする。

ねぇ、もしかしてこれも「愛」なのかな?


#大切なもの