青花一華

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#君の目を見つめると


青だった。
ただただ一面に広がる、豊かな広い海のような。美しいという陳腐な言葉だけでは、到底言い表せない。
今まで見たことのないような、透明な青だった。


新学期。新生活。入学初日に斜め右前となりの席に座ったその人は、ひどく魅力的に感じる青年だった。
理由など、言いようもない。
黒髪、黒目、中肉中背。いたって普通なようすで、
前の席の男子生徒と会話をしている。でも。やはりその人は何か他の生徒とは違う。しかし、その何かが分からない。何だろうか…。匂い?は特に、柔軟剤って感じだし。顔?は整ってはいるけれど、別に自分の好みってわけでもないし。声だって、低すぎず高すぎず、特段目立っていることは無い。身長だって、制服だって、上履きだって、なんだってその人を一身に見つめ続け、ひたすらに観察をした。気持ち悪いことこの上ない。だがしかし、これは大事なことなのだ。自分にとってはとても。
これこそ「運命」なのではないか、と若干感じてしまっている。俗に言う「ひとめぼれ」ってやつだ。でも、何にひかれているのか分からない恋だなんて嫌すぎる。
絶対、絶対突き止めてみせる…!そう意気込んでいた矢先、その人は私の方へと振り返った。

「ねえ、鑑さん?だっけ、さっき言おうと思ってたんだけど…もしかして俺とどこかで会ったことある??」
「…えっ」
「なんか、知り合いだったかな?って。俺、なんかわかんないけど鑑さんのこと知ってる気がする。…あれ?なんか怖いな俺?!笑」

青だ。濃く、澄んだ、透明な青だった。彼は、唯一無二の美しい青を持っていた。そして、私はこの青を知っている。純粋無垢で誠実なこの瞳は、ひどく遠いむかしの記憶を呼び覚ます。ああ。これは、「ひとめぼれ」なんかじゃない。

運命の人と再びめぐり逢えた、恋の「始まり」だ。

4/6/2023, 2:45:10 PM