たくちー

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11/15/2025, 7:18:43 PM

 私の車は車検に出しており、現在は代車が置かれている。図書館が開館するのは9:30の為、15分前に玄関を出る。しかし代車の鍵が見当たらず、木漏れ日の跡が押さえつけるようにトランクを照らしていた。後部座席には大量の雑誌が次々と乗り込んでいるところだった。日曜日の資源回収の為に、何の許可もなく台車は利用されていた。何処にも行く事が出来なくなった為、踵を返し、コタツに座って穏やかでない精神でぼーっとする。

「車使えないからさ、なんかゲームしよ?」
兄と予定していなかった時間を過ごす。

代車を物置代わりにした当人は、何車目かも分からない新車のアウディに乗って悠々と人気ラーメン店に向かった。

木漏れ日の跡はカーポートに遮られ、誰にも止めることは出来なかった。



題『木漏れ日の跡』

11/14/2025, 7:40:14 PM

 毎月10万円の養育費を払う。その約束は一回限りで打ち切られた。そもそも別居している時点で愛は冷めている。そんな相手に渡すくらいなら新生活のために使う。

「あの人は絶対に大丈夫だから。すごく優しいから」性善説は虚構だ。

フルタイムでダブルワークをしても生活ができない。子供はネグレスト状態で愛に飢えている。いずれ非行に走るかもしれない。

約束を守れない人は目先の生活しか見えておらず、その選択によって多くの尊い命と未来ある子供の将来が犠牲になることに気づかない。

ささやかな約束は池に投げ込んだ小石のように波紋を広げていく。


題『ささやかな約束』

11/13/2025, 7:17:35 PM

 早朝、仏壇の前で祈り、神棚に対して祈る。礼節を重んじているように見えるが、お供え物が用意されていないことに気づくと苛立ちながら炊飯器へ向かう。なぜなら本当の意味で祈っている訳でも感謝している訳でもないからだ。
ただの習慣的行為。他者よりも優れた人間であると満足したいだけの"慎みの見せびらかし"。

祈りの果てにインスタントコーヒーが残っていなくて怒鳴る。故人も呆れ果てているだろう。

"そんな態度なら、もう祈らなくていいよ。さっさと行ってくれ"



題『祈りの果て』

11/12/2025, 7:40:05 PM

 酒場に入る。服を見れば役割が分かる。戦士、僧侶、武闘家、魔法使い、そして勇者。なら私は何なのか。パンツ一丁に木の棒と鍋の蓋である。酒場の女性店員に叫ばれ衛兵がやってくる。「この変態め!」
なるほど私の職業は変態らしい。その後、囚人に転職した。さてこれからどうしようか。出来ることが限られている方が肝が座る。

心の迷路に苦しむのは選択肢が多すぎるからだ。
限られた選択肢から選ぶ方が圧倒的に生きやすい。



題『心の迷路』

11/11/2025, 7:10:29 PM

 これ以上は危険だと中身を捨てる。最後まで飲むことは絶対にない。なぜなら"最後まで飲んでしまった"という思いに支配され苦しみ続けることになるからだ。不可解に思うかもしれないし、食品ロスを減らそうとする社会の風潮から逸脱したマナー違反だと指摘されるかもしれない。だがティーカップにお湯を注いで飲むことによって得られる効果は"安心感"の筈だ。飲むことで安心を得る人もいれば、残すことで安心を得る人もいる。「ああ良かった、今日はお腹が空いた状態で食事を終えることができた」ホッと一息つく。



題『ティーカップ』

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