煌びやかなドレスが何着あっても、スポットライトに照らされなければ、モノクロームな世界でルービックキューブを完成させようとするほど無価値だ。
題『Red, Green, Blue』
門番「次!97番」
呼ばれた人が門の先へと進んでいく。
私は最後まで呼ばれなかった。
門番「最後は君か、24番」
目線を向けながら呟く。
門番「目立った経歴もなし。むしろ空白だらけだな」
なぜ最後まで呼ばれなかったと思う?
私「不合格だからでしょうか?」
そうだ、その通りだ。門番が答える。
「お前以外、不合格だった。おめでとう、合格だ」
お前は他の誰よりも弱かった。それなのに今日まで生き延びてきた。その生存能力の高さ。そして誰に対しても一貫性のある態度と敬意を示す人間性。お前にはまだ生きる価値がある。門番の姿が消えてなくなり、気づいたら点滴と酸素ボンベを取り付けた姿の私が純白の天井を見上げていた。看護婦が慌てて部屋から出ていく。あとで知ったことだが、十年前の飛行機墜落事故で私だけが唯一生き残ったらしい。部屋には消毒液の匂いに混ざって粗挽きのコーヒー豆の香りが漂っていた。
題『フィルター』
同じ趣味や目標を持っていても同じ熱を持つことができない。アンティークの鑑定家のように一歩下がった位置から玄人ぶった態度の冷たい眼差しを向けてしまう。私の考える仲間は、政治家に投票する一票よりも重く、三国志の桃園の誓いのように神聖なものだ。その道の先駆者のごとく独善的で独りよがりな審美眼を併せ持つ厄介者だ。誰よりも仲間が欲しいと恋焦がれながら、噛みついて拒絶することしかできない。本当は「大丈夫だよ」と優しく撫でてほしいのに。
題『仲間になれなくて』
オレンジ色のレインコートが散歩を待ち侘びた子犬のように明るい色彩を放っており、木製の持ち手が剥がれてボロボロになった傘は周囲に埋もれることなく老紳士のように穏やかに出番を待っていた。さて今日は誰と出かけようか。
題『雨と君』
学校にとって私はかつて存在していただけの老廃物にすぎないのだろう。教室の奥には「希望」と書かれた習字に金賞のシールが貼られており、窓から見える満月はよくできた贋作のようにベッタリと空に張りついていた。誰もいない教室は休眠状態の胃袋のように静まりかえっており、あと数時間もすれば再び活動を再開するだろう。学校は一部のものしか受けつけない偏食的な摂食障害のようであり、社会から完全に鎖国しており、開放的に見せかけた窓のない研究施設のようであった。ならばここにいる私はアニサキスのような寄生虫なのだろうか。それに関しては黒板にチョークで文字を書いているだけだから痛みはないと思う。
時間も無限にあるわけではないので作業を続行する。一人ひとりの机の上に花言葉を添えた紙と一輪の花を置いていく。黒板には「卒業おめでとう」という言葉を三年間の想いと共に描き込んだ。
さらば諸君!私の初めての生徒たち!
題『誰もいない教室』