門番「次!97番」
呼ばれた人が門の先へと進んでいく。
私は最後まで呼ばれなかった。
門番「最後は君か、24番」
目線を向けながら呟く。
門番「目立った経歴もなし。むしろ空白だらけだな」
なぜ最後まで呼ばれなかったと思う?
私「不合格だからでしょうか?」
そうだ、その通りだ。門番が答える。
「お前以外、不合格だった。おめでとう、合格だ」
お前は他の誰よりも弱かった。それなのに今日まで生き延びてきた。その生存能力の高さ。そして誰に対しても一貫性のある態度と敬意を示す人間性。お前にはまだ生きる価値がある。門番の姿が消えてなくなり、気づいたら点滴と酸素ボンベを取り付けた姿の私が純白の天井を見上げていた。看護婦が慌てて部屋から出ていく。あとで知ったことだが、十年前の飛行機墜落事故で私だけが唯一生き残ったらしい。部屋には消毒液の匂いに混ざって粗挽きのコーヒー豆の香りが漂っていた。
題『フィルター』
9/9/2025, 7:53:34 PM