学校にとって私はかつて存在していただけの老廃物にすぎないのだろう。教室の奥には「希望」と書かれた習字に金賞のシールが貼られており、窓から見える満月はよくできた贋作のようにベッタリと空に張りついていた。誰もいない教室は休眠状態の胃袋のように静まりかえっており、あと数時間もすれば再び活動を再開するだろう。学校は一部のものしか受けつけない偏食的な摂食障害のようであり、社会から完全に鎖国しており、開放的に見せかけた窓のない研究施設のようであった。ならばここにいる私はアニサキスのような寄生虫なのだろうか。それに関しては黒板にチョークで文字を書いているだけだから痛みはないと思う。
時間も無限にあるわけではないので作業を続行する。一人ひとりの机の上に花言葉を添えた紙と一輪の花を置いていく。黒板には「卒業おめでとう」という言葉を三年間の想いと共に描き込んだ。
さらば諸君!私の初めての生徒たち!
題『誰もいない教室』
9/6/2025, 7:30:57 PM