真小夜

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6/29/2022, 3:40:19 AM

「夏」

バスを降りると、むっとするほどの熱を帯びた風が体中に当たる。
祖父母の家まであと少しの道を歩く。真上に登った日はじりじりと頭を痛めつけている。

雪深いこの土地は、春が遅く短い。
道路側の庭に植えられている向日葵、マリーゴールド、サルビア、塀から垂れ下がる凌霄花、他の地域では季節の過ぎた紫陽花も皆一斉に咲き乱れる。
側の田んぼには露草、月見草、青々と生い茂った草から綺麗な青や桃色の顔を出している。

耳の側をぶーんと音がして反射的に頭を振る。
蜂が凌霄花のオレンジの花びらの中に吸い込まれていった。
耳に残った嫌な音を振り払いながら歩きだす。
遠くでカエルの鳴き声が聞こえてきた。

生き物は夏を生きている。
灼熱の地獄のような暑さの中、次の命を繋ぐために咲いて、飛んで、鳴いている。

ここへ来ると命がたくさん有ることを思い出す。


私も生きるために、まずは冷たい麦茶をもらおうと祖父母の家の門をくぐった。

6/25/2022, 5:54:52 AM

「1年後」

6月10日
あの日から1年経ちました。
あなたのおかげで10キロ痩せました。 
いつもありがとう。

―――

今日はおやすみします。

6/24/2022, 6:18:57 AM

「子供の頃は」

―――


   喫茶店。
   小さなテーブルを挟んでAとBが座っている。
   Aはスーツ姿。Bは制服姿。
   Aはコーヒー、Bはジュースを飲んでいる。


A「私、早く大人になりたかったんだよね。」

B「そうだったの?」

A「親の顔色伺って生きてるのが嫌だったの。もっ
  と自分の好きなことやりたかった。」

B「…好きなことって?好きなだけ明太子おかわり
  するとか?」

A「う、うーん…そういうことではない。」

B「あれ?家だと高いし塩分多いからって一回の量
  が決まってたの。Aもそうでしょ?」

A「まあ明太子の量は…って言う話じゃなくて、趣
  味とか進路とか結局親のいいなりになっていた     
  から、自分に嘘ついて誤魔化して、青春がもっ
  たいなかったなぁ…」

B「…わからないなぁ。私はまだ子どものままがい   
  い気がする。」

A「まだ中学生だよね?高校生くらいになって運命
  を変えるくらい好きなものに出会ったら、また
  違ってくるよ。」


   Aの携帯がなる。
   画面を確認するA。


B「そっかあ。これからか。」

A「ごめん。行かなくちゃ。」

B「ううん。…大人になって良かった?」


   間


A「うん!仕事の傍ら猫の保護活動は充実してる 
  し、親に反対されてた猫は3匹も飼っているか 
  ら毎日楽しい。そっちも頑張ってね!」


   A慌ただしく退場。


B「大人になって良かった…なら良かった。」


   暗転


6/23/2022, 9:51:17 AM

「日常」

早く日常に戻りたい。
あなたの笑顔が見られる日々が早く来てほしい。



―――

体調不良にて今日は休みます。
早くケガが治りますように…

6/22/2022, 4:58:14 AM

「好きな色」


「…紫陽花の色かしら。」

細い指を口元に当てながら彼女は答えた。
桃色の唇に透き通るような白がよく映える。

「えっ?アジサイの色?それって青?ピンク?」

僕の矢継ぎ早の質問に彼女の目は細まる。

「そんなに早く答えを言ってはつまらないじゃない。少し考えてみて。」

そう微笑んで言う彼女は、テレビで見る美人な女優さんよりも儚げで綺麗だった。
…そうはいっても、僕は彼女の好きな色を早く知りたかった。



次の日、また彼女の家を訪ねた。

「こんにちは。…あら、この袋は?」

僕が無言で渡した紙袋を彼女は受け取る。

「この前、転んだとき助けてくれたでしょ。そのとき貸してくれたハンカチ汚しちゃったから…」

「ああ、家の前で転んだときね。いいのよ、昨日ハンカチ洗って返してくれたじゃない。」

「でも、完全に綺麗にならなかったから…」

僕は居たたまれなくなって辺りを見回す。玄関だけでも豪華な家だとわかる調度品が並んでいる。匂いも甘い花の香りがする。どこの友人の家とも違う。

「母さんに新しいの渡してこいって言われて、好きな色のハンカチを…」

「だから昨日好きな色を聞いてきたのね。」

彼女は合点がいったようで、ふふっと笑った。
花のように可愛らしい笑顔。

「ありがとうございます。お母様にも伝えてね…薄ピンクの綺麗なハンカチね。」

結局、アジサイの色がわからなかったから彼女に似合いそうな色にした。

「アジサイの色じゃないかも…」

「いいのよ。この色も紫陽花にはあるから。…あなたが選んでくれた色が私の好きな色だわ。」

たぶん僕の顔は真っ赤だっただろう。
そんな僕を見て彼女はまた微笑んだ。

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