真小夜

Open App

「子供の頃は」

―――


   喫茶店。
   小さなテーブルを挟んでAとBが座っている。
   Aはスーツ姿。Bは制服姿。
   Aはコーヒー、Bはジュースを飲んでいる。


A「私、早く大人になりたかったんだよね。」

B「そうだったの?」

A「親の顔色伺って生きてるのが嫌だったの。もっ
  と自分の好きなことやりたかった。」

B「…好きなことって?好きなだけ明太子おかわり
  するとか?」

A「う、うーん…そういうことではない。」

B「あれ?家だと高いし塩分多いからって一回の量
  が決まってたの。Aもそうでしょ?」

A「まあ明太子の量は…って言う話じゃなくて、趣
  味とか進路とか結局親のいいなりになっていた     
  から、自分に嘘ついて誤魔化して、青春がもっ
  たいなかったなぁ…」

B「…わからないなぁ。私はまだ子どものままがい   
  い気がする。」

A「まだ中学生だよね?高校生くらいになって運命
  を変えるくらい好きなものに出会ったら、また
  違ってくるよ。」


   Aの携帯がなる。
   画面を確認するA。


B「そっかあ。これからか。」

A「ごめん。行かなくちゃ。」

B「ううん。…大人になって良かった?」


   間


A「うん!仕事の傍ら猫の保護活動は充実してる 
  し、親に反対されてた猫は3匹も飼っているか 
  ら毎日楽しい。そっちも頑張ってね!」


   A慌ただしく退場。


B「大人になって良かった…なら良かった。」


   暗転


6/24/2022, 6:18:57 AM