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4/11/2024, 3:36:58 AM

4/10「春爛漫」

 咲き乱れる桜。穏やかな気温と風。
 春だ。ようやく春だ。というか、今年は冬から夏に飛ばずにちゃんと春がある。
「去年は四季が二季になったかと思ったよね…」
「ほんそれ。日本の良さ行方不明だった。…ふぁ〜あ」
「はわぁ〜…伝染った。春眠暁を覚えず?」
「あ〜。そだねぇ」
 二人して目尻の涙を拭いながら、校門の桜を見下ろす。窓からの風が気持ちいい。
 春を、楽しもう。

(所要時間:11分)



4/9「誰よりも、ずっと」

「ねえ、聞いて聞いて。カレったら、『君を愛してるよ。誰よりも、ずっと』って言ってくれたの」
 嬉しそうに報告してくる。あたしはため息をついた。
「誰よりもって、それ他にも女いるって事じゃないの?」
「えっ」
 思いもよらなかったという顔。やれやれ、これだから。
 いつだって心配してるんだ。誰よりも、ずっと。

(所要時間:4分)


 
4/8「これからも、ずっと」

「ねえ。手を、繋いでいてよ」
 か細い声が言う。動かないその手を、そっと握る。薄い唇に、満足げな笑みが浮かぶ。
「ずっと、一緒だよ」
「うん」
「これからも、ずっと」
「うん」
 その答えに安心したのか、まぶたを閉じた。
 この人が死んだら―――自分はどうしようか。
 後を追うのか。生きるのか。いずれにせよ、「ずっと一緒」に変わりはない。この人の心は自分のもので、自分の心はこの人のものだ。
 それがどこか悔しくもあり、心地よくもある。

(所要時間:7分)

4/8/2024, 6:49:34 AM

4/7「沈む夕日」

「なにみてるの?」
「おひさまが海に沈むとこ。見てごらん、きれいだよ」
「おひさまがしずんだら、うみはあっつくないの?」
「夜になったらまた冷えるんじゃないかなぁ」
 適当なことを言いながら甥をあしらう。20年後にはこの子がとんでもない科学者になるのを知らずに。

(所要時間:4分)



4/6「君の目を見つめると」

「ねえ見て。私の目」
「何? 石にでもする気?」
「違うって。カラコンにしてみたの。ちょっと見てよぉ」
「やだよ」
 これ以上、魅了されちゃったら困るから。

(所要時間:3分)



4/5「星空の下で」

 星空の下で君と手をつなぎ、5年後の星空の下で君と語り合い、10年後の星空の下で君と誓い合った。
 60年後の星空の下で今、星になった君と、ひとり。

(所要時間:3分)



4/4「それでいい」

 「それでいい」って言ってくれる人がいるなら、それは最高に幸せなこと。

(所要時間:1分)



4/3「1つだけ」

 1つだけ、あの世に持って行けるものがあるなら、君との一生の思い出がいい。

(所要時間:1分)



4/2「大切なもの」

 大切なものは目に見えない、ってこういうことかな。
 大人たちには誰も見えないみたいだけど、僕の隣には死んだミャーコがいる。

(所要時間:2 分)



4/1「エイプリルフール」

「何さ、話したい事って」
「えーっと、」
 時計を見る。午前きっかりを過ぎて、エイプリルフールは終了。ここからは、嘘として認められない。
「俺と、付き合ってほしいんだ」
「いいよ」
 予想通りの即答と、
「なーんてね。知ってる、エイプリルフールでしょ」
 ほら、引っかかった。
 まあ、来年までに説明するさ。

(所要時間:5分)



3/31「幸せに」

 やっぱりね。
 あの人一人のはずの家の玄関に、女の靴。
 友達の家に泊まると言ったのは嘘よ。
 用意していたガソリンをたっぷり撒いた。
 どうぞ、お幸せに。あの世でね。すぐに私もお邪魔しに行くけど。

(所要時間:3分)



3/30「何気ないふり」

 混んでいる車内で大股を広げて座っている男がいた。何気ないふりで、二人がその膝の上に座る。
 何すんねん、と言いかけた男は、膝の上に乗った子供二人に怒鳴りつけることもできず、脚を閉じる。
 双子はサムズアップし、車内に拍手が湧いた。

(所要時間:5分)

3/30/2024, 3:46:00 AM

3/29「ハッピーエンド」

 恋が叶ったとか。結婚したとか。世界に平和が訪れたとか。
 ハッピーエンドだとは思わない。だって人生はその後も続いていくから。

(所要時間:2分)


3/28「見つめられると」

 手が震える。汗が噴き出す。心臓が早鐘のように鳴る。
「何か用だったんじゃねえのかよ」
 彼女がつまらなそうに吐き捨て、背を向ける。視線が外れた途端、僕は脱力する。
 ああ、今日も告白できなかった。

(所要時間:3分)



3/27「My Heart」

「わたしの心臓を射抜いてごらん」
 そう言って胸をはだけたその女に、俺は心臓を射抜かれた。

(所要時間:1分)



3/26「ないものねだり」

「ないものねだりってさぁ、自分の持ってないものをねだるわけじゃん?」
「ん? まあ、そうかな」
「普通のおねだりと変わらなくない? というわけで、美味しいコーヒー買って」
「いや、そういう意味じゃないでしょ」
「買って買って買って〜」
「ない」
「は?」
「コーヒーはこの世に存在しない」
「ちょ…」

(所要時間:4分)



3/25「好きじゃないのに」

 クラスのササキくんがいたずらしてくる。
 大人は「多分マミのことが好きだからいたずらするんだよ」って言う。
 いたずらされるのは、嫌だ。だから、ササキくんのことも好きじゃない。
 いたずらされなければ、好きになれたかも知れないのにな。

(所要時間:3分)



3/24「ところにより雨」

 空は快晴。雲一つない。でも。
 何があったかは聞かないでほしいんだけど、僕の心は雨模様。

(所要時間:1分)

3/23/2024, 7:23:23 PM

3/23「特別な存在」

「キミは私にとって、いや世界にとって、特別な存在なのだよ」
 博士はいつもそう言った。夢見るように、歌うように。
「さあ、始めよう」
 ワタシはこくりとうなずく。
 ワタシは特別な存在。
 ワタシにだけ、全てが許される。
 ワタシは特別な存在。
 これから、世界を破壊する。

(所要時間:3分)



3/22「バカみたい」

 いつもいつも心配させて。ケンカしてはケガばっかりして。
「お前には関係ねーよ」とか言っちゃって。
 ああもう。人の気も知らないで。
 ヤキモキしてるあたしがバカみたい。

(所要時間:3分)



3/21「二人ぼっち」

  僕と君は   私とあなたは
     いつもすれ違い

      隣にいても
君が見えない  あなたが見えない

     いつもいつでも
  僕と君は   私とあなたは
      二人ぼっち

(所要時間:4分)

3/20/2024, 11:49:54 PM

3/20「夢が醒める前に」

 あ、これ、夢だな。
 そう気づいてしまった。そうなると、目が醒めるのは時間の問題だ。その前に何かしないと。
 俺は片思いの彼女に会えるよう念じた。景色は適当にすっ飛び、俺の眼の前には彼女が眠っていた。ショートカットで、金髪で、―――こんな子だったかな。夢の中では常に記憶は曖昧だ。
 とにかく俺はその子にキスをした。

 数年後、俺はどういうわけか、金髪ショートの彼女と付き合って、もうすぐ結婚するまでに至っている。
 彼女にいきなり告白された時にはびっくりしたけど、その理由をいまだ彼女は明かしてくれない。

(所要時間:7分)



3/19「胸が高鳴る」

 公園で彼女を見た時、不意に胸が苦しくなった。心臓が激しく鼓動を刻む。この胸の高鳴りは、どう考えても、恋―――
 ではなかった。俺はその場に倒れ、救急車で運ばれた。
 ちなみに、その時病院に付き添ってくれた彼女が、そのまま俺の彼女になった。結果オーライ、めでたしめでたし。

(所要時間:5分)



3/18「不条理」

 妹の娘、つまり姪を、預かった。
「おりょーり、おてつだいする!」
 と言って踏み台を持ってきて、隣に立つまでは可愛かった。
 材料を鍋に入れると言って、ひとつずつつまんで入れる。粉をぶちこぼす。鍋をいつまでも無駄にかき混ぜる。
 いつもの倍の時間と手間がかかり、疲れ切ってソファーに沈んだところで、
「おてつだいしてあげたんだから、あそんでよ!」
 正論、だが理不尽。

(所要時間:5分)



3/17「泣かないよ」

 怒鳴られても。
 殴られても。
 引きずられても。
 ぼくは泣かない。泣かないよ。
 ぼくがしっかりしなきゃ、ママを守れないから。

(所要時間:2分)

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