3/20「夢が醒める前に」
あ、これ、夢だな。
そう気づいてしまった。そうなると、目が醒めるのは時間の問題だ。その前に何かしないと。
俺は片思いの彼女に会えるよう念じた。景色は適当にすっ飛び、俺の眼の前には彼女が眠っていた。ショートカットで、金髪で、―――こんな子だったかな。夢の中では常に記憶は曖昧だ。
とにかく俺はその子にキスをした。
数年後、俺はどういうわけか、金髪ショートの彼女と付き合って、もうすぐ結婚するまでに至っている。
彼女にいきなり告白された時にはびっくりしたけど、その理由をいまだ彼女は明かしてくれない。
(所要時間:7分)
3/19「胸が高鳴る」
公園で彼女を見た時、不意に胸が苦しくなった。心臓が激しく鼓動を刻む。この胸の高鳴りは、どう考えても、恋―――
ではなかった。俺はその場に倒れ、救急車で運ばれた。
ちなみに、その時病院に付き添ってくれた彼女が、そのまま俺の彼女になった。結果オーライ、めでたしめでたし。
(所要時間:5分)
3/18「不条理」
妹の娘、つまり姪を、預かった。
「おりょーり、おてつだいする!」
と言って踏み台を持ってきて、隣に立つまでは可愛かった。
材料を鍋に入れると言って、ひとつずつつまんで入れる。粉をぶちこぼす。鍋をいつまでも無駄にかき混ぜる。
いつもの倍の時間と手間がかかり、疲れ切ってソファーに沈んだところで、
「おてつだいしてあげたんだから、あそんでよ!」
正論、だが理不尽。
(所要時間:5分)
3/17「泣かないよ」
怒鳴られても。
殴られても。
引きずられても。
ぼくは泣かない。泣かないよ。
ぼくがしっかりしなきゃ、ママを守れないから。
(所要時間:2分)
3/20/2024, 11:49:54 PM