4/7「沈む夕日」
「なにみてるの?」
「おひさまが海に沈むとこ。見てごらん、きれいだよ」
「おひさまがしずんだら、うみはあっつくないの?」
「夜になったらまた冷えるんじゃないかなぁ」
適当なことを言いながら甥をあしらう。20年後にはこの子がとんでもない科学者になるのを知らずに。
(所要時間:4分)
4/6「君の目を見つめると」
「ねえ見て。私の目」
「何? 石にでもする気?」
「違うって。カラコンにしてみたの。ちょっと見てよぉ」
「やだよ」
これ以上、魅了されちゃったら困るから。
(所要時間:3分)
4/5「星空の下で」
星空の下で君と手をつなぎ、5年後の星空の下で君と語り合い、10年後の星空の下で君と誓い合った。
60年後の星空の下で今、星になった君と、ひとり。
(所要時間:3分)
4/4「それでいい」
「それでいい」って言ってくれる人がいるなら、それは最高に幸せなこと。
(所要時間:1分)
4/3「1つだけ」
1つだけ、あの世に持って行けるものがあるなら、君との一生の思い出がいい。
(所要時間:1分)
4/2「大切なもの」
大切なものは目に見えない、ってこういうことかな。
大人たちには誰も見えないみたいだけど、僕の隣には死んだミャーコがいる。
(所要時間:2 分)
4/1「エイプリルフール」
「何さ、話したい事って」
「えーっと、」
時計を見る。午前きっかりを過ぎて、エイプリルフールは終了。ここからは、嘘として認められない。
「俺と、付き合ってほしいんだ」
「いいよ」
予想通りの即答と、
「なーんてね。知ってる、エイプリルフールでしょ」
ほら、引っかかった。
まあ、来年までに説明するさ。
(所要時間:5分)
3/31「幸せに」
やっぱりね。
あの人一人のはずの家の玄関に、女の靴。
友達の家に泊まると言ったのは嘘よ。
用意していたガソリンをたっぷり撒いた。
どうぞ、お幸せに。あの世でね。すぐに私もお邪魔しに行くけど。
(所要時間:3分)
3/30「何気ないふり」
混んでいる車内で大股を広げて座っている男がいた。何気ないふりで、二人がその膝の上に座る。
何すんねん、と言いかけた男は、膝の上に乗った子供二人に怒鳴りつけることもできず、脚を閉じる。
双子はサムズアップし、車内に拍手が湧いた。
(所要時間:5分)
4/8/2024, 6:49:34 AM